短歌18
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靴捨てて歩けば砂のやはらかく裸足楽しき蒲公英の浜(拾遺)
五月雨の後の渦巻き流る川はや現れて渡る蝶あり(七瀬川)      10.6.28
通り抜け許すと蝶の導きぬ山門開く紫陽花の寺(真言宗各年寺)    10.7.1
アドバルーン飛び込むがごと眼に入りぬ梅雨の晴れ間の窓を開ければ
流れゆく太き丸太とドラム缶速さ競ふや五月雨の川             10.7.14
滔々とただ滔々と流れゆく流れゆくのみ五月雨の河
豊後富士雲の衣を朱に染め日の出待つかな梅雨明けの窓(梅雨明け)10.7.19
入道雲覗くがごとく写りをりバックミラーの梅雨明けの空
梅雨明けて子供服干す庭先に咲きて輝く向日葵の金             10.7.27
煩悩を払ふがごとき蝉の声大き木陰に憩ふやすけさ
扇風機涼しき風を送りくる大の字に寝る産土の家(立秋)           10.8.7
入道雲亡き師の顔に見えてきて心を覗くごとく思はる(遺稿を読んで)   10.8.12
秋風に靡く草葉のつれなくて蝶留まらんとするを拒める(台風逸れる)
向日葵の花目に熱き公園のベンチの二人ながく寄り添ふ(七瀬公園)   10.8.18
朝曇り今日の一日を思ひつつ窓を開ければ鳩の糞落つ
森深く羽美しき蝶一つ小妖精のごとく誘ふ(9/8訂正)           10.8.25
秋風に飛ばされゆくか乗りゆくか蝶々一羽谷を越えゆく
開き了えいま又閉づる白蓮の眠れる影を月の照らせる(少林寺の池)  10.8.26
月の出を待たで閉じたる白蓮の眠れる池に月の影さす(追加)
庭べの夏の終はりの薔薇の花蝶の留れば崩れけるかな
秋の窓眺めてをれば白き雲ながく止まるアンテナの上            10.9.8
少しづつ容を変ふる窓の雲眺めてをれば母に肖てくる
ふるさとの古道の端の石仏今も在ゐますや野菊隠れに            10.9.9
古道の石に見まがふ石仏誰が供えしか秋の草花
さらわんとしきりに挑む波頭波打ち際の破れパラソル(田ノ浦)      10.9.11
髪吹かれ手をポケットに道行けばふと口ずさむ青春の唄          10.9.14
秋の蝶石に留まりて哀れなり羽を畳みてながく動かず
君無くて何ぞ月見の楽しかろただ酔ふためぞ今宵の宴は(親友M死す)10.9.21
鳥一羽よぎりて寂し秋の窓眺めてをれどまたはよぎらず           10.9.25
昨日今日窓の景色は違はねど君亡きあとの今日の眺めぞ
曼珠沙華咲けば思はる鞭うって友と帰りし故里の路
<曼珠沙華咲きて明るき丘のうえ帽子を脱げば空の降りくる(城山)>    10・9・28
コスモスの風に吹かるる丘に来て帽子を脱げば空の降りくる(しあわせの丘)10.10.1
わがために置かるるごときベンチあり誰が名づけしかしあわせの丘
流れゆく落ち葉一枚見送りてふと思はるる次にくるもの              10.10.2
ゆく水に色づき流るもみじ葉のいよいよ赤し秋雨のあと(改訂)
秋風の心地のよさよ出で行けば白髪はなびく若い日のごと           10.10.5
拾ひ持つ落葉一枚捨てかねて持ちて帰りぬ栞にせんと(M回顧)       10.10.10
吹く風に落葉つぎつぎ舞ひあがり地に着くまでの舞ひを競へる        10.10.14
溪紅葉双眼鏡で眺むればあらぬ処に滝のかかるも               10.10.15
幼き日吾ら通ひしこの路や今も変はらぬコスモスの花              10.10.16
久方の空高みかも岡の辺の一本杉の指せるその空               10・10.20
いまは亡き君と歩きしこの路や小石拾へり故もなけれど             10.10.22
路の辺にそよぐセイタカアワダチ草野菊を覆ひ吾が背丈越ゆ
そのかみのわが学舎の址に来てながく手を触る巨き楠木(東庄内小学校址)
見はるかす夕焼け空の彼方にて十万億土君と隔たる
八千草の葉におく露の照らさせて玉と輝くこの月夜つくよ佳し           10.10.23
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