短歌14
雲の峰静かに映る湖の岸辺に咲くや白百合の花(志高湖・追加)
電線に一羽とまれる秋燕羽根繕ひて遠く見るかな(追加)
風に乗り涼しげなれど庭の蝶目に親しまずなりにけるかな 09.9.3
窓に見ゆ遠山脈とほやまなみの高き峰いたく目につく秋の来たれば(久住連山)
庭先に陽当たりながら散る一葉踏めば音する秋の音する 09.9.9
風の脚さやかに見ゆる草むらに殊に野菊の花の吹かるる
高々と屋根越えゆきし蝶一羽いづち行きけん秋風に乗り
子牛連れ肥後の赤牛歩みゆく厩舎に向かふコスモスの道 09.9.10
秋晴れの高き空より降りくれば天の使ひと思ふ白鷺(連作) 09.9.13
秋すでに白鷺一羽目に定か葦の茂みに隠れ得ずして
雲秋意白鷺一羽風に乗り空の高みへ羽ばたきゆけり
秋風に吹かれ糸垂る巌のうへ何釣る人ぞ上がる魚なし(田ノ浦) 09.9.14
草土手の芒の上に出る月も円くぞなりて蟲の音涼し
風に散る落ち葉いよよ多くなり庭掃く老ひの日課忙し 09.9.17
ゆく秋の由布と鶴見の並ぶ峰雲に包まる仲よきがごと
風に乗り縺れ飛びゆく蝶々二羽蝶といへどもペアは羨ともしき
秋草を踏めば飛立つ蝶のあり見れば小さき花の咲くかな 09.9.18
曼珠沙華咲けば思はるランドセル背に重かりし故里の道(改正) 09.9.20
大空と青さを競ふ秋の海水平線はいよゝ弧をなす(田ノ浦ビーチ) 09.9.21
秋来ればたびたび登る丘のうえ少し近づく空のよろしき(しあわせの丘)
秋来ればたびたび登る丘のうえ触れてやさしきコスモスの花
コスモスの風に吹かるる丘の上町を見下ろす高さよろしき
出て見れば星美しき里の秋触れて冷たき八千草の露(故郷) 09.9.23
秋の雨草木を濡らし地を濡らし最も人の心を濡らす 09.9.29
ゆく川の流れに浮かぶもみじ葉のいよいよ赤し秋雨の後
今日の月遮る雲も空になし受けて清さやかや盃の中(中秋の名月即興) 09.10.3
我が帰る古さとの道狭けれど狗尾草えのころぐさの触れて親しき 09.10.9
流れ行く紅葉一枚見送れどなほも流るる眼まなこのなかを 09.10.10
二三枚紅葉をのせて帰りきて妻は畳むや秋雨の傘 (訂正)
丘の上ひねもすそよぐ芒の穂空行く雲に手をふるごとし 09.10.12
行き行けど出逢ふ人なきこの山路松ぼっくりを蹴飛ばしてゆく(久住歴史の道)09.10.16
野菊咲き萩咲く野辺の細道や行きも帰りも出逢ふ人なし
外輪山ひねもすそよぐ芒の穂手を振るごとし阿蘇に向かひて
阿蘇遥か眼鏡を拭いて眺むれば微かなるかな白き噴煙
天高く指さす方に見ゆる山煙のあれば阿蘇と知らるる
白き蝶吾が行く前に現れてあはれ誘ふや秋草の道
一人来て一人眺むる秋の海一羽のかもめ吾に近づく(田ノ浦ビーチ) 09.10.21
寄せ返す波が運びし貝の殻拾ふ人なき晩おそ秋の浜
浜すでに波と戯る人ぞなき足跡ばかり数多あまた残るも
草枯れて出逢ふ人なき土手の道鴨の数など数へて通る(鴨来る) 09.10.28
枯れ芒手を振るごときこの夕べ声の聴こえて渡る雁あり 09・10・30
秋の湖清く湛へて波もなし逆さに映る豊後富士佳し(志高湖)
今日の日の終はる影ひき枯れ芒手を振るごとし落ちてゆく陽に 09.11.1
冬すでに由布も鶴見も見えぬ窓煙草の煙吹きかけてをり(立冬) 09・11・6
持ち古りし傘頼もしく差しゆけど心を濡らす秋の雨かな
目覚むれば声懐かしき明烏旅路の果ての故里の家 09.11.16