短歌12
船一艘霞の奥に消えゆきてまた現れぬ春の海かな(訂正)
水温む水を触りて子どもらはしかと確かむ大和の春を
巡りつつ季節のめぐりしかと知る落花を浮かぶ山の湖
ゆく春の海を眺めて眼とづれば聴こえくるかな潮騒の音
三色菫パンジーと札のみ立ちし花壇あり春まだ浅き学びやの庭(稙田小学校) 09.4.6
通学路外れて児らの帰りをりタンポポの花ハコベラの花
春の海ながく眺むる女ひとのあり霞の外は何も見えねど 09.4.8
初夏の海を見に来て去りがたし沖の鴎の招くがごとし
永き日の球追ふ児らにグランドの大き時計の針はなきかな 09.4.10
遅き日をいつまでもゐる鷺一羽葦の茂みに見え隠れして
目覚むればいつも来てゐる屋根雀今日も来てをり彼氏を連れて 09.4.13
ゆく春のベンチの憩ひ長ければ鳩は寄りくる人の足もと 09.4.15
すかさずに飛びきて蝶の憩ひをり公園ベンチ人去りしあと
日一日眺めて飽かぬ由布の峰雲の衣をいく度も変ふ 09.4.19
春すでにチューリップ畑昼深し蝶々飛びきて長くキスする(くじゅう花公園)
流れゆく雲の行方を想ひつつ窓べにながく頬杖をつく(ゆく春)
藤古木下に佇みうち見ればあはれ美うつくし千の花房(西寒田神社) 09.4.22
目の前に垂れてをかしき藤の房幽かに揺るる蜂の羽風に
一弁も散らすことなき白牡丹カメラ幾つも向けられてをり
人去りて真昼寂しき牡丹苑花の鋏の忘られてあり
暮れなづむ川原を歩く鷺一羽長く首伸ぶ逆光のなか
南風や髪なびかせて立つ少女おとめふと彫像のごとく思はる(田ノ浦ビーチ) 09.5.2
タンポポの絮の飛びゆく方見ればただ青あをと空ぞあるなる(五月晴れ)
吹けば飛ぶタンポポの絮吹きをればふと故里の空ぞ恋しき(追加)
ふるさとの春を想へり水車めぐる岸辺の蒲公英の花(拾遺訂正)
藤の花静かに垂れて昼ふかしこの山寺に来る人もなし(少林寺) 09.5.4
禅寺の苔むす庭の石の上垂れて静かや白藤の花
足止めて親しき声と聴きにけり呟くごとき老鴬の声
草若葉運動靴を履き行けば若き日のごと雲の輝く(GW)
人絶えし逢魔が時となりにけり苑の牡丹の闇に呑まるる
目の前や白き煙も変はらずに昔ながらの大阿蘇の山(大観峰にて) 09.5.7
並みよらふ遠山並みの一所煙のあれば阿蘇と知らるる
道逸れてこれより向かふ大観峰車道をよぎる黒揚羽蝶
菜の花のあなたに見ゆる青き海いつもの時刻巨き船航く(拾遺)
春霞消えていよいよ広き海水平線をなぞり船航く(田ノ浦ビーチ) 09.5.8
夏来たる磯の巌いはほに打ち寄せて砕くる波の音ぞしぶきぞ
母の日の母あることの確かさにカーネーションの花一つ買ふ 09.5.9
鳩もまたあひ争へることのあり春の一日の窓の出来事 (追加) 09.5.18
暮れなづむ川原を歩く白き鷺翼を広ぐ逆光のなか(改訂)
また一羽蝶の飛びきて渡りゆくこの渓川の早き流れを(七瀬川・雨後)
老ひの門閉ざす日課の幽けさに一輪咲きし庭の紅薔薇 09.5.21
誰にやるものとはなしに剪り持てば若き吾あり一輪の薔薇
何となく良き日と今日の思はれて剪る庭先の赤き薔薇かな 09.5.24
薔薇の花血潮のごとく赤ければワイングラスに妻は飾るも
蹴飛ばせば空き缶ひとつ転げゆき小さき花咲く草に隠るる 09.5.25
草むらに待宵草の密かなり月の出待ちて昼を眠れる