短歌11
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カンバスに若き女の描きをり目で見るよりも青き湖(志高湖・追加)
冬近し山より下る白鷺のこの頃多し葦の間に間に
川中の一つとび出る尖る岩いたく目につく冬の来れば            08.11.25
川中のとび出る岩に来る鷺をこの頃は見ず冬の深まる
足早に通りすぎをり行きもまた帰りも一人冬枯れの道             08.12.12     
枯れ果てて見るも侘しき庭先に一輪咲きし山茶花の花 
新しき年の始めの谷川の調べ聴きをり故里に居て                09.1.1
雲の上に顔をつき出す豊後富士雪の化粧を直す初春(元旦初雪)
妻と吾と二人となれば広けれど寒しと思ふ水仙の部屋(秀晃また去る)     09.1.3   
土産なき里の土産と剪りくれし水仙の花コップに活けし
水仙を活くる姿のかなしもよふと我見たり若き日の母(母85歳誕生日)   09.1.10
ふるさとの我家の窓の想はるる梅の開花をテレビで見れば           09.1.13  
冬ごもり門閉ざしたる我が庭に咲きて久しき山茶花の花
冬ごもり妻が剪り来し水仙の花飾らんと机拭くかな
水仙を活くる手先の生き生きとふと我見たり若き日の妻
電線に音符のごとく留まりゐて小鳥らは奏づ早春の譜を            09.1.20
山茶花の花咲き満ちし我が庭や今年の冬も去年に変はらず         09.1.22
炬燵にて蜜柑剥きつつ父母の語るはすべて過ぎし日のこと
豊後富士雲のベールを取り払い雪の化粧を直し顔出す(冬晴れ)      09.1.28
水仙の少し傾げる花見ればふと想はるる若き日の君              09.2.1
本閉じて灯り消すとき気づきたり玻璃窓にある冬の満月
世の中の苦しきことを逃れんと山に入りきて枯れ木を折れり          09.2.6 
春かなし北へと向かふ候鳥の飛びゆく影を窓にて見れば           09・2.14
ほろ苦き味こそよけれチョコレートバレンタインデーに義理で貰ひし
伝来の瓶こそよけれ活けし梅勁く枝張る掛け軸の前              09.2.16 
日翳れば春あともどり庭先の水仙の花見ればうつむく(寒波再来)      09.2.17
梅が香やたどり着きたる国分寺待ちて坐します古き御仏(薬師如来)    09.2.25
天平の鴟尾を戴く屋根の上鳩舞い上がる春風に乗り(歴史資料館)
臥龍梅花の盛りは過ぎたれど杖ひく人のながく見上ぐる (吉野梅林)
頬杖をついて眺むる窓の外濡れて犬ゆく春雨の中
子にも告げ妻にも告ぐや初蝶を見し高ぶりを隠しもえずに           09.3.2
初蝶を散歩の道に見し日よりながく見ざりし次なる蝶を             09.3.13
川淀に一輪浮かぶ落ち椿春は流れに乗りて来るかな
また一輪椿を運ぶ流れありその水上の想はるるかな
川中の一つつき出る尖る岩濡れて鷺立つ春雨の中
行く水に廻りそめたる水車春の流れに調べ添へをり(七瀬公園水車)
春すでに来てをり土手の径行けば次から次に逢へる蝶かな          09.3.16
揚げ雲雀頭上に高く囀るをしばしは若き心もて聴く(初雲雀)
春遅し花咲くまでの空しさを補ふて咲く水仙の花(故郷、黄水仙)       09・3・17
春の海霞の他は見えねどもベンチの憩ひややながきかな(田の浦ビーチ) 09.3.23
花霞うすく纏ひて豊後富士ひと日親しく吾が窓にあり              09.3.27
桜花散り浮く池を巡りつつ思ひめぐらす人の世のこと(高尾池)
花の下足投げ出して寛げば落花舞ひ飛ぶ蝶のごとくに             09.3.31
桜花今を盛りと眺むれば落花一片眼の前を飛ぶ
春寒くやや波荒き湖に飼はれ白鳥身を寄せて浮く(志高湖)          09.4.3
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