短歌10
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南風や海より出でてビキニ嬢岩に憩へり人魚のごとく           08.6.9
時鳥聴きつつひとり灯り消し深く目つむる故里の家             08.6.15  
花あやめ撮らんとカメラ構へれば飛び来て留まる白き蝶かな(太田菖蒲園)08.6.22 
滔々と渦巻き流る川の音叫ぶ がごとし五月雨のころ
ゆく春の白き花咲く土手のうへ自転車二台寝かし置かるる(拾遺改正)
人訪へば迷路のごとき路地の奥門閉ざしたる紫陽花の家(回想・坪井氏)
雨上がり雨のまだ干ぬアジサイの花に早や来し瑠璃揚羽蝶         08.6.29
事務の手を休めて窓に目をやれば覗くがごとし初夏の雲
雨上がり傘畳まずに回しゆく妻まだ若し紫陽花の径(改訂)         08.7.3
雨の傘日傘に替へて女ひと通る露のまだ干ぬ紫陽花の径
梅雨の蝶案内あないのごとく前をゆく露のまだ干ぬ紫陽花の径
傘さして下駄鳴らしゆく石畳塀より覗く紫陽花の花(湯平温泉)
古さとやこの道今も変らねば口笛吹いて手をポケットに          08.7.4
ゆく水に終日巡る水車こころ寂しきときに見に来し
ふるさとの川辺に巡る水車見詰めてをれば想ひぞめぐる
目覚むれば味噌を煮る香の鼻に入る一夜ひとよ泊りし故里の家 
葦の間を流れて涼し夏の川脚を浸して鷺の遊べる             08.7.18
少林寺春を訪ねて来てみれば仁王の肩にとまる蝶かな(追加)
花びらを浮かべて流る渓川の早瀬となりてつくる渦かな(追加)
阿蘇遥か真昼に近き高原の千のひまわり太陽に向く(くじゅう花公園)   08.7.27 
立秋の窓に並ぶや由布鶴見雲の衣をともに脱ぎ捨て              08.8.7 
造り花買ひきて妻の飾りをり本物の花飾る手つきで (割れた壺を修復して)08.8.12
終戦の日の新聞を読む父の何やらもらす独り言かな              08.8.15
晩夏光浴びて出でゆく連絡船汽笛ならして沖にまだゐる            08.8.18
海晩夏白き水脈みをひく連絡船見えなくなりて汽笛を鳴らす
浜晩夏波と戯る子どもらのいつしか飽きて砂を掘りをり             08.8.25
来てみれば晩夏の浜に人もなし波弄ぶ空き缶一つ
水脈白く引いて出でゆく連絡船晩夏の沖にいつまでもゐる
空港のロビーの大き窓ガラス澄みゆく青き空を映せり             08.8.29
舞ひ降りてまた舞ひあがる白鷺の広ぐる羽に濃き晩夏光           08.9.25
風のあることの確かさ風車児の手に持たせ乳母車ゆく            08.10.12
一回りして町空の秋燕雲の彼方へ消えてゆきけり
天高し双眼鏡で眺めれば阿蘇は近づく野菊の前に(改正・久住高原)
天高く阿蘇の五岳の隠れなし帽子をとりて見る人のあり(城山展望所・津田教授 を思い出し)
大阿蘇をながく眺めて目をやれば野菊の花の殊にそよげる
牧さやか道二股に分かるるもどちらの道もコスモスの花(久住高原牧場)
天高し牛尾を振って歩みゆく牧場に通ふコスモスの道
牧さやか牛鈴鳴らし歩みゆく厩舎に向かふコスモスの道
阿蘇さだか寝釈迦のごとく横たはり靡く芒のかなたに憩ふ(その昔、津田先生に教えられて)
秋の湖うみ四方の紅葉の映りをり豊後の富士を映す位置にて(志高湖)   08.10・20  
秋の湖清くたたへて波もなし空を写して空より青し
(秋の湖広くたたへて波静か空を写して空より青し)
夕焼けに染まる水面に波たちて葦辺に渡る水鳥の影
溪紅葉撮らんとカメラ構へをりまず広角にレンズを換へて(九酔渓・連作短歌の試み08.11.12
溪紅葉カメラに収め目に収め歌にも詠んでこころに収む
見渡せば照る日に映ゆる溪紅葉老ひの命の燃ゆるがごとし
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