短歌9
見返ればコスモスの花風に揺れ高原牧場濃き晩夏光
晩夏光纏ひ出で航く連絡船遠くなりゆくほどに輝く(追加)
晩夏光纏ひてモータボート航く沖にまだある夏を追いかけ(追加)
帆を下ろし白きヨットの泊まりをりマストを照らす濃き晩夏光(大分港) 07.10.1
帆を下ろしヨットの集ふ船溜まり船の名照らす濃き晩夏光
掌を合はす石の仏の前を飛ぶ人なき寺の秋の蝶かな(少林寺) 07.10.5
秋の蝶力尽くして飛びゆける留まるを拒み靡く草の葉
水浴びる児等の真上に陽は照れどプールに浮かぶ落ち葉一枚 07.10.13
いつしかに秋の流れと川なりて浅瀬に永く鷺を立たしむ
いつしかに秋の流れと川なりて立つ白鷺の影の清けし
夕風に黄金の波の寄する田に落つる夕日も黄金色かな 07.10.19
落つるとき狂へるごとく舞ふ落ち葉地に横たはる姿安けし 07.10.23
軽やかに家路を急ぐ吾が前に落つる夕日の黄金色かな
秋の雨そぼ降る中を帰りきて畳める傘に付きし紅葉 07.11.6
初冬の田ノ浦ビーチ人もなし吾に寄り来る一羽の鴎 07.11.22
訪ね来し小林禅寺人もなし紅葉を踏みて上る石階 07.12.3
葦の間に降り立つ鷺の影冴えて流るる水も冬を急げる 07.12.10
冬急ぐ流れとなりし谷川に脚を浸して白き鷺立つ
吾が庭の山茶花の花咲きにけり即ち待たる峰の白雪(修正)
七瀬川枯れ葦原の葦の間を流るる水の光る新年 08.1.2
たはむれに土を握りて虚しかり即ち知れぬ人の行くすゑ(偶成) 08.1.5
少林寺人目も枯れて冬深し石の仏の深く目つむる 08.1.25
春一人部屋に篭りてながむれば壁のモナ・リザ、ウインクをする ☆ながめる→もの思いに沈む 08.2.22
船一艘深き霞に消えゆきてまた現れぬ春の海かな 08.3.16
神宮に一輪咲きし桜花テレビ画面に映りて巨き(東京開花宣言) 08.3.23
菜の花の彼方に見ゆる豊後富士汽車いま渡る長き鉄橋 08.3.26
菜の花の中を流るる大き川海近かければ先を急がず
鴨の群れいつしか消えし川淀に空き缶ひとつ浮いてをるなり
吾が庭の桜数輪咲きにけり子の旅立ちを見送りたる日
08.4.2
葉桜といつしかなりし並木道重き鞄を持ちし人ゆく 08.4.15
菜の花の咲きたる中を埃たて旧きバスゆく故里の道 (懐旧) 08.4.21
ゆく水に落花の浮かぶ川の中游魚は知らず地上の愁ひ
ゆく春の外輪山に来てみれば蒲公英の絮風に飛びゆく 08.4.29
ゆく春の外輪山に来て虚し蒲公英の絮吹いて飛ばしぬ
菜の花の中を手をふり児等帰る故里の道信号なき道
草千里馬の背に乗り手を振ればなびき応ふる阿蘇の噴煙 08.5.7
女きてながく眺むる藤の花女盛りを過ぎしその顔(西寒多神社)
赤い屋根白きフェンスの丘の家小庭に咲きし向日葵の金 08.5.23
四月尽パンとミルクの食事終え読む新聞に若葉が映ゆる
薔薇一輪妻に贈るや誕生日齢重ぬも心な老ひそ (洋子誕生日) 08.5.26
遣水に廻り初めたる水車あやめに注ぐ水の豊かさ 08.5.27
つれづれに枕草子手にとれば時空を超えて伝はる心
牡丹寺訪はんと問へば指さしぬ若葉の隙に見ゆる大屋根(訂正・英雄寺)
菖蒲園吾より先に行く妻に白き蝶々の連れ添ふてをり 08.6.9