詩49
   川 
              08.3.31
菜の花の咲く
平野を
一筋の川が流れている

川はゆったりと湛え
急がずに流れている

遠い海に向かって
ゆっくり
ゆっくり と

あまりにゆっくりなので
子どもたちが
小石を投げて
急がしている
 
  春の川
             08.4.8
たっぷりと湛えた
春の川を
二つの空き壜が流れていく

空き壜は
くっついては 離れ
離れては くっつきながら
ゆっくりと流れてゆく

川原で遊んでいた
子どもたちがふと見つけ
それを めがけて
次々に 石を投げだした

が、石は当たらず
空き壜は また
くっついては 離れ
離れては くっつきながら

ゆっくり
ゆっくり
遠い海に向かって
流れていく

のんきな春の太陽が
優しく
それを照らしている
   少女 
               08.4.15
菜の花畑の中を
一台の自転車が
光りながら走ってゆく

自転車の主は
一人の少女
髪を風になびかせながら
懸命に自転車を漕いでゆく

少女は何を急いでいるのだろうか
美しい菜の花も見ないで
一途に自転車を走らせてゆく
まるで 自身の少女期を
急いで通り過ぎたいとでもいうように

スカートに風をいっぱい孕ませて
すらりと伸びた健やかな脚で
軽やかにペダルを踏みながら
一心に自転車を走らせてゆく

菜の花畑の上に
ポッカリと浮かんだ
白い雲が
優しくそれを見つめている
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