詩44
  冬の使者
             07.11.20
テレビ画面に
白鳥の姿が大写しになり
冬の使者 と
ナレーションが付く

窓の外に目をやると
落ち葉が大慌てで逃げまどい
並木は
緋の絨毯を敷き詰めて
歓迎の準備を整えている

目を上げると
雁の先遣隊が
編隊を組んで飛来し
装った木々たちがしきりに
手を振っている

間もなく
遠くの山並みの向こうから
風に乗って
冬将軍がやってくる
     窓・雲
                 07.11.23
秋の窓に
ぽっかりと白い雲が一つ浮いている
雲は こちらを見ている
まるで 母の顔のように

雲は
何所からやって来たのだろうか
丘の上の
一本杉の辺りから

あるいは
はるか遠く
畳なづく山の彼方から
はるばる旅して来たのであろうか

ぼんやりと眺めていたら
雲はふいに近づいて
私の悩みや心配を
ふんわり包くるみ持ち去って

また ゆっくりゆっくり
動いていく
海の方角に向かって
形を変えながら

やがて
広い広い海原に出たら
雲は そこに
私の悩みや心配を捨てるのであろう


  やうやくに白髪のふえる頃ほひと
         なりていよいよ空想たのし
                       山下陸奥
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