詩40
妄想 06.9.12
僕が詩で叫んだとしても
いくら熱っぽく訴えたとしても
世界がそれで少しでも変わるという訳でもない
世界が平和になるということもない
僕のそれが妄想であることは
僕は十分に知っている
しかし
僕は妄想を止やめられない
僕の妄想は止まらない
妄想は妄想を呼び膨らみ
誇大妄想となり
人に笑われようとも嘲られようとも
僕の妄想は止められない
僕は妄想する
自然の大きな魂が息づいて
人に至福の時間が流れている
そんな世界があることを
人と自然が融合し
人が自然と語り合う
そんな世界があることを
日々鳥は歌い
花は笑い
石ころさえも語りかけてくる
本当にそんな世界のあることを
僕はますます妄想する
この妄想が
人の妄想をかきたてて
世には妄想が蔓延り
<或いは現実との区別がつかなくなり>
賢人の教えはだいなしになり
世は妄想の世となり
人生は所詮妄想に過ぎないのだと
誰もが信じるようになり
<或いは大夢が自覚され>
現世への執着が薄れ
欲望が薄められ
争いが絶え
世界が一歩桃源郷に近付くことを
たとえ妄想だとしても
妄想以外のなにものでもないとしても
この妄想の世こそまことと思う
この妄想を僕は捨てられない
ある風景画に
07.2.19
まだ多感だった少年の日
一冊の画集を眺めていて
ふと私は
ある風景画にひきつけられた
その絵は
私をひどく魅了し
その絵の中にいる小さな人物は
自分であるように思われた
やがて、時は流れーーー
私の絵画への熱も興味も
しだいに薄れゆき
その絵のこともすっかり忘れ去った
そんなーーー、ある日
私は市まちの美術館で
偶然、その絵の本物に出会った
当然、その絵の前に佇んだ
すると、突然!
時間が逆さに流れだし
絵は私を吸いつけ
私を絵の中に吸い込んだ
ルオーの「晩秋」