詩41
嘘
07.10.9
見えにくいもののなかでも
最も見えないものは
人の心であろう
そして、われわれが
最も見たいと思うのも
また、人の心であろう
もし、人の心が見えたらーーー
彼女の、或は、彼の心が見えたら
君の心が見えたら
上司の心が見えたら
−−−−−−−−−
−−−−−−−−−
でも、私の心も見えたらーーー?
ああ
それは神の恩寵
お陰で
われわれは嘘もつける
神の許しの範囲内で
由布の峰
07.10.13
我が家の窓から見える
由布の峰
別名 豊後富士
朝な夕な
遠く眺めるその麗姿
子ども心に憧れて
絵にも描かん
詩うたにも詠まん
と思っていたが
ある日 思いたち
登山靴を履いて出で行きしに
近づけば
汝も ただの山
秋の蝶
07.10.13
秋の蝶が
一匹
飛んでいる
力尽き
疲れた姿で
それでもなお
ひらひらひらと
私の前を飛んでゆく
私もひどく疲れている
一人寂しく歩く私を
励まし誘うように
ひらひらひらと
蝶は力尽くして飛んでゆく
私の前を飛ぶ蝶と
それを追うようにゆく私と
秋の風に吹かれて
共に
同じ方向に進んでゆく
一本の
行方の知れぬ道を−−−
窓の景
07.10.16
ああ あまりにも清澄な
秋日和
窓から見ると
雲一つない大空に
遥かな峰々はくっきりと
その端麗な勇姿を
誇らしげに
余すなくさらけ出している
ところで
ビルと前山との狭間に
少し姿を見せる
豊後富士よ
今日のお前は
何か少し恥らって
姿を隠している人のように
私には見える
わさだタウンにて