短歌5
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十五夜の月を心に描きつつ折りもて帰る空き地の芒                06.10.6(中秋の名月)
妻も子も出掛けてをれば今日の月ひとり眺めて一人酒酌む
今日の月仰ぎて土手の道を行く白き芒を手に折り持ちて
白き雲眺めてをれば消えゆきて復現れぬ秋の窓かな
手に持てば黄金のごとく輝きぬ君が拾ひし銀杏の落ち葉              06.10・11
観てをれば憂き世のことも忘るなり大き仏のごとき大阿蘇             06.10.24
サクサクと落ち葉踏み行く森の径楽しと思ふひとりの歩み             06.10.28
街路樹が散らす落ち葉を踏み行けば通勤の足少し弾める
見てをれば風もないのに散る落ち葉競ふがごとく着地を決むる
行く秋の葉を落ち尽くす柏の樹名残を惜しみ数葉を残す
秋天を高く昇れる鳥のあり老ひの瞳のいつまでも追ふ
羽一つ高き空より舞い降りぬ渡り鳥かも過ぎて行きしは
気がつけば行く人絶えし土手の道吾一人ゆく秋の夕暮
思ひ出のメロディー歌う女歌手老ひの声良し同世代なり
十三夜月の光は変はらなねど伴に眺むる人のなきかな              06.10.30 
手を繋ぎ若きふたりの歩みをり頻りに落ち葉ふり撒く並木             06.11.5
快速車止まらず過ぐる無人駅プラットホームに揺るるコスモス(庄内 4首)   06.11.6
故里に帰りたること確かにてコスモスの道長く続けり
ランドセル背負ひて児等の帰りをり一人遅るるコスモスの道
コスモスの咲きて明るき村の道見知らぬ人に声を掛けらる
吾が歌のつまらなけれど大方の歌詠み人の歌もつまらぬ(図書館にて)     06.11.7
出て見れば雲一つなき今日の空帽子を取りに書斎に戻る              06.11.11
気がつけば吾一人行く土手の道一番星のすでに出てをり
見てをれば日当たりながら散る落ち葉ウルトラCの着地を決むる
峰一つ雪装ふを待たれをり稲刈り終えし里のやすけさ (湯布院盆地)
白鳥に餌撒き与ふ子どもあり撒きたくなりて吾も撒きけり               06.11.13
日翳ればたちまち変はる湖うみの色即ち寒き鴨の鳴き声
湖暮れて仄かに白む波の上鴨の浮き寝を月の照らせる
秋の谿ながく眺めて人去れり同じ位置にて吾もまた見る
来てみれば鴛鴦おしの睦める山の池一人訪れ来たる寂しさ (青少年の森)    06.11.21
行く人の前を落ち葉の走りゆく追はるるごとき師走となれり              06.11.25
吾が庭の山茶花の花咲き初めぬ窓に待たるる峰の白雪               06.11.27
ふと見れば白きもの窓に落ちてきぬXマスツリー飾れる窓に            06.12.5
日翳れば瀬の音寒き谿川に鷺の立ちをり脚を浸して                  06.12.4
つり橋の上より眺む秋の瀧遠眺めして近付かぬかも
惜し気なく黄金を散らす銀杏あり今年の秋のフィナーレとして            06.12.11
白鳥の浮く湖に映る峰雪粧ふを待たれをるなり                     06.12.18
犬連れて小春日和の土手行けばしきりに尾を振る犬と思へる
(犬連れて来る小春日の土手の道しきりに尾を振る犬と思えり)
窓の外一顆残れる庭の柿年改まりなほも留まる <年賀状>
吾が庭の山茶花の花咲きにけりこの頃妻の少し明るし
小夜時雨黒き空より降りきたる裸になりて立てる庭の木                06.12.20
渡り来て岸に安らぐ鴨の群れ越え来し峰の湖水に映る
額縁に収まるごとき窓の由布富士の絵を見るごとく眺むる(窓ガラスを拭いて)   06.12.29
一年ひととせの心の垢も落とさんと長く浸かれる大晦日の湯              06.12.31
春の日や窓より見ゆるグランドの大き時計に針なきごとし(拾遺)
薔薇一輪活けてコップの置かれをり結婚記念日忘じてをれば(拾遺)
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