短歌4
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湖の岸辺に咲ける百合の花今も咲きをりかの日のごとく           06.8.3
平和の日平和を祈り祈りつつ祈りは年々強くぞなれる             06.8・6
腕組みて目つぶりてふと思ふかな若き日の疑問解けたるもなし       06.8.9
土手の道走り急げる児等のあと追ひかけてくる夕立の雨
夕風にみどりの波のうち寄する青田すがしも白鷺の飛ぶ
春真昼湖うみに出て舞ふ蝶のありおのが姿を水面に映じ<改作>         06.8.10
椎の樹の上に現る夏の雲今日も出てをり同じ形で
つれづれに空しき窓を見てをれば流るる雲も飛ぶ鳥も愛し             06・8・11
赤蜻蛉吾が行く方に多ければふと故里の道と思へり
アクセルをぐいと踏み込む高速路白き雲追ひ海に向かへり
山百合の花を離れし揚羽蝶吸はるるごとく谿を墜ちゆく                06.8.15
道の辺の石の仏の首失すも仏と拝むこころ変はらず
里中の首失ひし石仏戦の記憶いまはここのみ
樹の陰のベンチに睦む若人の耳の外なる秋蝉の声                  06.8.22
湖に姿を映す百合の花少女のごとく少し俯く                       06.8.24
塵多き巷をしばし離れんと丘に登れば百合の花咲く  <しあわせの丘>
野菊咲き白き雲浮く丘の径若き日の妻前行くごとし
やや永く晩夏の海を見てをれば吾より永く眺む女ひとあり                06.8・26
浜晩夏若者一人波に向き拾ひし石を遠く投げたり
来てみれば晩夏の浜に人もなしサンダル一つ波に漂ふ
波寄する晩夏の浜に人ぞなき足跡ばかり数多あれども
暘谷のお城の址に佇みて松吹く風を永く聴くかな  <日出暘谷城址>
秋風に吹かれて土手の道行けば尾を振る犬に追ひ抜かれけり
鳩一羽あてなき様に飛びゆけるただ秋空を飛ばんがために
電線に止まりて憩ふ一羽鳩遠くを見をりいつ迄も見をり
来るたびに思郷のこころ強くなる丘に咲きたるコスモスの花             06.8.27
楠大樹逞しき枝広ぐるを幹に手をやり児は仰ぐなり                   06.8.30
秋の風庭樹に入りて揺さぶれば去りゆく夏に手を振るごとし             06.9.8
秋風の庭樹に入りてさやげるを何かを告ぐる声と聞きをり
少林寺訪はんと落ち葉踏み行けばしだいに落ち葉深くなりゆく
羅漢寺の五百羅漢のその中の首なき像のお顔想へり
御空より落ち葉一枚舞ひ降りぬ季節の便り届くがごとし                06.9.20
ゆく秋の風にあふられ飛ぶ蝶の飛び行く方に大き河あり
ゆく秋の実を落ち尽くす庭の柿名残を惜しみ数顆を残す
吾少し熱くなりたる両国の相撲も終はり秋の深まる                   06.9.25
湖をひとり漕ぎ出すボートあり湖心に到り永く止まる
秋の湖うみ林を抜けて眺むれば豊後の富士を逆さに映す
曼珠沙華咲きて明るき村道を児は手を繋ぎ帰りゆくなり                 06.10.2
ゆく秋の海を眺めてやや永くベンチの男女会話交はさず
秋の海眺めてをれば沖の船いつしか消えて復現れず
虫の声聴きつつ仰ぐ天の川昭和も遠くなりにけるかも
コスモスの花のそよげる丘に立ち帽子を取れば髪もそよげる
コスモスの咲きて明るき丘に来て帽子を取れば下りてくる空
大阿蘇を去らんと後を振り向けば強く手を振る裾野の芒
満月の吾に連添ふ影法師吾手を振れば汝なれも手をふる(戯れに)          06.10・6

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