短歌2
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吹く風に逆らひ飛べる蝶のあり汝が抵抗の何故なるぞ            06.5.22
蝶二つ一つの蝶を奪ひあふ今が盛りの牡丹花(ぼたんくわ)の上
過ぎゆきし時の流れを忘れをり亦大阿蘇を目の前にして           06.5.26
今日の日を静かに終ふる藤の棚花の夕映え永きかも
朝の窓開くれば強き光あり梅雨の明けたることの確かさ
暮れなづむ空を写せる菖蒲池水の夕暮れ静かなるかも
近づくと見せて飛び去る燕<つばくらめ>土手いく吾を誘ふがごとし
風に舞ふ花に紛れて舞ふ胡蝶録画のごとく心に残る
蝶一つビルの谷間を迷ひ飛ぶ即ち街にまだ在る季節             06.5.29
緑陰や憩ひたまえへと椅子の在り帽子をとりて暫し休める
ゆく春や岸に上がれる白鳥の長き首伸べ見上ぐ大空
窓の外しばしばよぎる鳥の影などか忙せわしも春の終わりは
窓に湧く雲もくもくと盛り上がり魔人のごとく立てる初夏
花薊ここに憩へと石の在り暫し休みてまた歩みいく
狭霧台車を止めて見返れば吾が故里は雲のあたりに             06.5.30
雨上がり晴れゆく峰を見てをれば龍のごとくに霧立ち昇る
薔薇の園若き女の入りけるを永久とはに出で来ぬごとく思ひぬ
薊咲き白き雲浮く土手の道追いぬかれつつ行くぞ楽しき            06.5.31
打ち交はすテニスボールの響き良し見下ろしてゐる初夏の雲         06.6.1   
四月尽朝のミルクを飲みながら視る新聞に青葉が映える
五月尽朝のミルクを注ぎながら視る新聞に海山のこと
時鳥しば鳴くときし想はるる帰れと告ぐる父母の声
朝の窓開くれば突如舞ひ込みぬ梅雨の明くるを知らせる蝶々
春の昼街に掲げし看板の大きな顔に止まる蝶かな
初夏の雲の湧きたつ丘の上空を支えて大き樟立つ
クローバの四葉を探す吾が妻の若き日の癖今もかはらず
白き雲遠く浮かべる草の原ボールを強く蹴りたかりけり             06.6.2
梅雨明けて青く広がる今日の空強くボールを蹴上げてみたき         06.6.
白き雲遠くに浮かぶ草の原強くボールを飛ばしてみたき
時鳥しばしば鳴くを聴きをれば何かを告ぐる声かとも               06.6.5
大き樹を見上げてをれば傍にきて声もかけずに見上ぐ人あり
椎大樹深き木陰を作る昼児を眠らせて乳母車あり
白き雲遠くに浮かぶ土手の道日傘の女乳母車押す
スカートに風を孕ませ乙女等が自転車を漕ぐ草土手の道
故里の樟の大樹に残る傷いつの日なりし吾のつけしは             06.6.10
ジーンズの女押し行く乳母車遠く雲浮く草土手の道                06・6・14     雨上がり遥かに続く土手の道吾が行く前に大き虹立つ                        雨上がり児等の遊べる声聞こゆ紫陽花の花咲ける路地裏
城下町残る往時のたたずまい白壁の塀石畳道
山国の城失ひし城下町春の月出づ石垣の上
草原を二つに分ける鉄条網やすやす蝶の越えてゆくかな
梅雨曇り鈍く澱める街の空ビルより低く鳩の舞ひ飛ぶ               06.6.15
街中に広く枝張る樟大樹憩ひたまへと濃き陰つくる
里びと等煙草を吹かし語りをり田植え終へるたる顔のやすけさ
大き樹の陰に工夫の憩ひをり兵士のごとくヘルメット脱ぎ
名月を眺めてをれば傍にきて声も出さずに妻もまた観る