短歌24
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この庭の隅に置きたる手水鉢紅葉を浮かべ月影うかべ(遍瑞寺)拾遺
わが庭に二羽来て親し寒すずめ仲よきかもよ父母のごと     
(わが庭に二羽きて親し初すずめ仲よきかもよ父母のごと)
朝夕に愛で眺めたる豊後富士見えぬ所に父母の墓       12.1.14
父母の墓に参りて目を瞑り目を見開きて一歩踏みだす
熱き茶を飲みつつ眺む窓の由布雪の化粧のまた新しき     12.1.17
由布の雪窓に愛でつつ熱き茶を飲む贅沢に変はるものなし
冬の雨雪にもならず降りしきり味気なきかな山茶花の庭     12.1.19
冬の雨雪にならんと眺むるに濡るるばかりぞ庭の山茶花
見あぐれば峰より高く洋凧と和凧とあがる初晴れの空(旧正月) 12.1.23
冬ざれの道を急げば向かふかた時雨の雲をまとふ由布が峰    12.1.24
着膨れて家に篭れる日の憂さに餅を焼きをり裏返しつつ       12.2.1
今日の由布いかんと窓に寄り見れば雲の帽子に濃き雪化粧
正直に春立つ山の霞みをり由布の高嶺に雪は残れど(立春)    12.2.4
(正直に春立つ山の霞みをり峰の白雪いまだ溶けねど)
タンポポの一輪咲くをスナップし携帯メールで送る立春(触目)
今日の由布まとへる雲の厚ければ春待つこころまた後戻る     12.2.5
後戻る春もまた好し豊後富士装ひ直す峰の白雪
目つぶれば春の訪れ確かなり遠き瀬音の聞こえくるかな      12.2.6
出でゆけば春のこころの定まりぬ時違はずに開く蒲公英      12.2.7
後戻る春と思はじ梅の枝開くを待ちて蕾の多し(七瀬公園)     12.2.8
梅咲けど春の景色の整はず由布の高嶺に光る白雪         12.2.10
藪椿開くを待ちし蕾あり雪の重みに枝は撓れど
窓の外高嶺の雪は変はらねど枝の梅花のまたも一輪
春の雨ひと日止まずに夜となれば心の奥に入りて降り継ぐ     12.2.13
咲き初めて日に日に増ゆる梅の花はやく来たれと思ふ鶯      12.2.16
春もはや空の景色を整へり雲柔らかき鉄塔の上           12.2.19
春を待つ池の面おもては変はらねど水澄む底に動くものあり     12.2.22
いつしかに春の流れと川なりてながく眺むる人のあるかな     12.2.23
ひとところ渦を作れる谷川の落ちて流るる椿巻き込む        12.2.24
父母のまこと仏となりはてて初めて知りぬ仏たりしを         12.2.26
父と母ともに旅立つ愛いとしさよ寂滅為楽南無阿弥陀仏       12.2.27
春浅く久住の山に残る雪薄き霞の奥にひかれる(西の窓)              
春告げて咲きしばかりの藪椿落ちて踏まるるはやも一輪
目覚むれば現うつつにもどる虚しさよ夢に現れ消えし父母      12.2.28
旅立ちに遅れし鴨か帰ること拒みし鴨か春雨の中          12.3.1
春訪ね山里近く来てみれば来たると告げて鶯の鳴く(平野)    12.3.3
春の雨傘をさす人持たぬ人持ちてささずに濡れてくる人(街角)  12.3.5
日ひと日眺めくらせば春の窓みな雲ゆくや行方も知らに       12.3.8
行く雲の数こそ知らね春の窓眺め暮らして今日も終りぬ
競ひ咲く白梅紅梅いづれぞと心に問へば浮かぶ面影(即興)   12.3.9
この苑の白梅紅梅見くらべて紅きを愛す老ひのこころに
散りゆきしあまたの命想はるる落花一片手のひらに受け(鎮魂) 12.3.11
春真昼落ちて驚く藪椿小鳥飛びきて蜜を吸うなり(しあわせの丘にて)12.3.13
梅咲きて鶯聞きし昔かな軒端虚しきふるさとの家           12.3.14
出でゆけば天つ光りの暖かくいづくともなき鶯の声          12.3.16
気がつけば齢重ねて何もなしまた一つ取る今日の寂しさ(66歳)
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