カルト山〜兜山周辺ランニング登山 
               
挾間 渉
  
       
                    カルト山

 カルト山(1033.5m)は以前に一度だけ登ったことのある山だが、山そのものの印象は薄ぼんやりとしたものであり、それよりも南面の山腹での山菜採りの印象の方が強い。

 今年のゴールデンウイークに久し振りに山菜採りで訪れ、それなりの収穫を得た。改めて地図を精査しながら、この山の北方・福万山〜兜山方面に展開する、複雑に入り組んだ林道のことが気になり始めた。もちろん、お目当ては山からの贈り物たるウド、タラノメのことが、その第一義なのだが、ランニング登山の対象としてはどうだろうか?

 山菜採りに興じたその2日後の5月7日、急に思い立って出かけることにした。地図に明記された林道とはいえ、最近の県内林業の低迷に加えて、ここら辺り一帯は、既に10年以上も前の台風(1991年台風第19号)により甚大な被害を被ったところでもある。風倒木の修復作業が捗っているのだろうか、荒れ具合が気になるところである。

 そこで道を見失うことのないよう、位置の把握のためにハンディGPSを持参するとともに、これにカシミール3Dで作成したルート図をあらかじめ転送しナビゲーションしてらうことにした。

        
             ランニング登山計画図(コースナビ)

 9時34分カルト山林道ゲート(標高805m)をスタート。デジカメとハンディGPSをウエストバックに、麦茶500cc、サンドイッチ、菓子、ウインドブレーカー、着がえなどを入れたデイパックを背負い、日当たりの良い緩やかな上りの林道をキロ6〜7分ペースで駆ける。963ピークを大きく迂回しゲートから3.8kmで林道は兜山方面とカルト山頂方面へ二つに分岐する。

        
             カルト山林道の分岐からカルト山頂目指して

 カルト山山頂目指して分岐より左手の林道を選択し約500mほど駆け上ったところで林道を逸れ、最短の尾根伝いにGPSナビの指示に従って進む。カルト山(1033.8m)の山頂は灌木に覆われ視界は効かない。小さな手作りの標識が木にくくりつけられており、三等三角点とともにそこがカルト山頂であることをかろうじて示している。


                        カルト山山頂


        
          カルト山を終えしばらくは快適なランニング登山

 さて、先程の分岐まで一気に下り北方の兜山(1016m)目指して標高約900mの水平林道をひた走る。995mピークを西から東へと捲く辺りは林道も比較的整備され時折ヤマバトやホシガラスの羽音が静寂を破るほかは明るく静かなランニング登山だ。ほどなく、カルト山のゲートから丁度8キロ走ったところで再び分岐となる(標高920m、10:52)。左へはしっかりした轍があり、どこか近くで作業中なのであろう、営林署の車が2台停めてある。

 コースを、あらかじめ入力したGPSの指し示すとおり右に採ると、やや荒れた路面となる。約100m程ですぐに分岐となり左方向、福万山から兜山に連なる尾根の南面を北上する。ここに来て当初の不安は的中した。林道は至る所で風倒木に遮られ、ランニングどころではなくなった。おまけに薄暗い杉木立の中で地図に記載のないいくつもの分岐があり衛生電波の受信状態は最悪だ。1046mピークを過ぎた辺りでは受信不可能となりルートミスを犯してしまう。それでも幸いなことに木漏れ日が差すような辺りではちゃんと方向と目的地点までの距離を示してくれタイムロスはあったものの、事なきを得た。

        
              兜山南面から横山(左)と平家山(右)

 正午前にいったん福万山から西に派生した尾根の山腹、明るい日溜まりに出る。ここで大休止をとりサンドイッチを食べ水分補給。ここは平家山から横山方面の山並みの格好の展望所だ。ここら辺り一帯の山々にはこれから目指す兜山をはじめとして平家山、宝山など平家落人伝説とも関係した、いはく因縁のありそうな山名・地名が多いことに気づく。

          
          ハンディGPSで現在位置と進行方向を入念にチェック

 さて、時間は充分あるとはいえ薄暗い杉木立の中でほんの束の間見つけた展望所だけに長居は無用だ。この先どんな障害が行く手を阻むか想像できないし、ここまで来たら引き返すことはなおのことできない。先を急ぐことにしよう。

 再び鬱蒼とした中に入っていくと案の定風倒木が最悪の状態だ。倒木の朽ち具合からして1991年に大分県を襲った台風19号の爪痕だろうか。過疎、高齢化などにより風倒木の復旧作業が思うに任せないのだろう。予定では兜山山頂から真南に引いた線と林道との交叉する地点を、次なるウェイポイントとしてGPSに登録していた。衛生電波の受信状況そのものは相変わらず良くないが、それでも木洩れ日の差す場所ではGPSは忠実にウェイポイントをナビゲーションしてくれる。が、倒木とイバラにより思うように進めない。散々紆余曲折、コースの修正を繰り返しながら、この間800m、時間にして25分の悪戦苦闘の末、やっとの思いで兜山山頂に到着。頂上までが短距離であったのが幸いであった。

          
                     兜山山頂

 だだっ広い兜山の山頂は、平家落人伝説から想像するに祠の一つでもあるのかと思ったが、境界を示す石柱がカヤに埋もれてポツリあるのみ。展望も福万山方面が僅かに見通せるだけで良くない。また、本当にここが山頂なのだろうかと少し不安になったが、帰宅後GPSトラックデータ(軌跡)をカシミール3Dに転送した結果、間違いなく山頂を踏んでいることを確認した。そんな風で落ち着ける場所もなく早々の下山となった。

        
             全行程17.2km、累積標高差980mのGPS軌跡

 下山も倒木の間を縫うように、設定した地点までルートを逸れないように慎重になった。幸い風倒木は兜山山頂直下が最もひどい状態であったが下るにつれて、人力による作業の気配が感じられるようになり、再びランニング登山を再開。林道を一気に駆け下り日出生台方面からの道に合流(標高693m)。ここからは出発点のカルト山林道入り口まで約2kmの緩やかな上りを、車や人に出会うこともなく、静かなランニングを楽しんだ。

 ところで、冒頭述べたお目当てのウドとタラノメのことだが、カルト山南面以外には、今回のコース中ほとんどまったくと言っていいほど見つけることができなかったことを付記しておく。帰路は、久し振りに野矢温泉まで足を伸ばし、全行程17.2km、累積標高差980mのランニング登山の汗を流した。

         
                   野矢温泉で汗を流す

コースタイム カルト山林道9:35(802m)→カルト山への林道分岐10:04(942m)→カルト山山頂10:24(1,038m)→兜山山頂12:04(1,025m)→日出生台からの道路と合流12:43(699m)→カルト山林道入り口13:04(平成16年5月7日)

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