県南の山旅(後編)  元猿山〜高平山〜仙崎山 挾間 渉

三っ子沖を見下ろす元猿山
12月21日 晴れ
 前夜の忘年会では、久しぶりの再会ということもあり、よく飲み、よく食い、よくしゃべった。仲間が三々五々引き上げていくのを見送る。やや二日酔いながらも、終日の好天が約束された今日、願ってもない登山日和だ。せっかく遠い蒲江町まで来て、このまま帰る手はない。まず高山海岸まで車を走らせる。

          
           GPS軌跡に見る元猿山の登路(樹林帯のため衛生
             電波の捕捉が不良により随所で途切れている)


 元猿山・・・高山海岸を挟んで昨日登った背平山と対峙するこの山は標高270.0m。山頂から北に伸びた尾根の末端の鞍部から取り付くことにする。元猿の集落から鞍部目指して上がっていく。鞍部付近は地区の共同墓地となっている。ここから、低灌木の生い茂っただだっ広い尾根の中に入っていく。

   

 薄暗いが幸い藪こぎはなさそうだ。踏み跡ははっきりしないが、注意すると赤いテープが数m間隔で巻かれており、少しほっとする。テープを見落とさないよう忠実に辿っていくと鞍部から35分ほどで山頂に着く。周囲を低灌木に囲まれ見通しの効かない、だだっ広い山頂部には、そこが頂であることを示す標柱と三角点がポツンとあるほかは何もない。ちょっとがっかりだ。

           
                 高平山から元猿山を見下ろす

 大体において海辺の、外海を見通せるような突き出た岬の山には、遠見山とか魚見岳などと言った山名に見られるように漁村との因縁浅からぬものがあるものだ。従って、漁の安全祈願や大漁を祈る意味での祠などが山頂に祀ってあることが多い。元猿の漁師達の好漁場である三っ子島沖を見下ろす山の上だ。てっきり何かを祀ってあるだろうと期待して辿り着いた山頂には、三角点と標柱意外に人工的なものは見あたらず、それに眺望もまったく効かず少々期待はずれであった。復路は途中、鞍部に戻る道と分かれ、左(西)側にとり、元猿集落の西のはずれに下る。

[コースタイム]元猿地区駐車場(標高8m)9:01→共同墓地上部の鞍部(37m)9:14→山頂9:43→駐車場10:21

日豊海岸のビューポイント・高平山と仙崎山
 さて、次なるは高平山から仙崎山だ。高平山の頂稜部の展望所まではアスファルト舗装の快適な車道が伸びていおり、そこからさらに仙崎山ツツジ公園までは標高180〜230mの水平サイクリングロードが伸びている。MTBを移動手段にして両ピークを目指すことにする。

   


 元猿地区でMTBに乗り換え、まずは竹野浦河内から高平展望所までの2.3km、標高差200mのヒルクライムだ。この日の元猿地区周辺はいつになくにぎやかである。それもそのはず蒲江町ぶりロードレースのほか大分県一村一ウォーク蒲江大会と称した行事の真っ最中だったからだ。後者は徒歩で高平→仙崎コースと、その逆のコースに分かれてのウォーキングであり、大半が中高年層、マイペースで車道を三々五々歩いている。その脇をすり抜けるようにして展望所まで駆け上がる。

           
             高平展望所への車道中腹から元越山(中央)遠望

    

 高平山(345.7m)の山頂はこの展望所からさらに約1.2kmほど稜線伝いに緩やかに登ったところだ。低灌木樹林のトンネルの中、良く整備された遊歩道が北東方向にほぼ真っ直ぐ伸びており、時折り展望が開け大海原が見え隠れする。展望所から20分ほどで辿り着いた山頂は周囲の樹木を刈り払っているので見晴らしはすこぶる良い。その上、さらに展望台が設けてあるのでその上に立つと日豊海岸をはじめ360度のパノラマが展開する。昨日とはうって変わって風もなく気温も高く穏やかな正午前、しばしのんびり景色に見入った。

 さて、往路を引き返したのちは、再びMTBにまたがり、仙崎ツツジ公園まで、途中前述のウォーキンググループの仙崎コース組の集団をすり抜け、水平道を左手に時期遅れの100万本の野路菊を、右手眼下には大海原を見ながら約3q走る。

           

 西ノ浦から上がってきた車道と合流後分岐を右に上がり仙崎ツツジ公園へ。公園では高平コース組がのんびり昼食の最中だ。せっかくののんびりムードに水を差してはとそそくさに退散し今日最後のピークとなる仙崎山(412m)の山頂を目指す。

 山頂へはツツジ公園から砲台跡を経由するコースと、東の地蔵崎方面からの登路がある。今回は後者をとることにし、いったん前述した車道に出て南側山腹を捲き地蔵入り口にMTBをデポし、灌木のトンネルに踏み込む。

             

 ここから足を踏み入れる人は少ないのだろう。登路が荒れており勾配の急な箇所にしつらえた丸太の階段が朽ちかけ荒れるに任せているという感じだ。わずか20分ほどの所要ながら最後の急登はちょっと堪えた。だだっ広い山頂には案内板や石碑などあるが訪れる人が少ないのだろう。やや荒れておりうら寂しい雰囲気だ。展望は宮崎県側にのみ開けており、県境の山並みの向こうに見覚えのある山塊が目についた。大崩山だ。県境の山並みの上にちょこんと上部だけを見せている。

           
              仙崎山の山頂からかすかに大崩山を望む

 そういえばカシミール3D(※)での事前調査によると、昨日の背平山や、先ほどの高平山、それにこの仙崎山などの頂上から四国の雄峰・石鎚山が、理論的には見えるはずであった。しかし、四国愛媛県方向を凝視しても微かに愛媛県南部の山々が目に入るだけで、その最奥は靄の中、「やはり無理か」と、少々がっかりだ。

           
              仙崎山(左)と高平山(右)・・・豊後黒潮ラインより

 それにしても昨日今日と2日間、たかだか300〜500m程度の薮山ながらも、豊後水道から太平洋を間近に臨む大海原を飽くことなく展望できる県南の山々6座に足跡を残すことができ、トライアスロン仲間の忘年会に山旅をセットにしたのは良い試みだったと実感できた。まだ陽も高いし、あと二つほどは登れそうだが、独りの山旅はすぐに里心がつくし、一度に登り尽くすよりも次回のため余韻を残すことも大切であろうと、今日はここまでとする。

 MTBをデポした出発点に戻り、MTBに乗り、先程、仙崎ツツジ公園で一緒になったウォーキング高平コース組の集団の中を三たびすり抜け、標高差300mほどのダウンヒルを楽しみ西野浦経由で元猿に戻り、2日間の楽しい山旅を終えた。

[コースタイム]元猿地区駐車場(標高8m)10:35→竹野浦河内(標高20m)10:42→高平展望所(標高224m)→高平山11:22→高平展望所11:44→仙崎ツツジ公園(標高312m)12:09→仙崎山登山口(標高295m)12:15→仙崎山12:27→登山口12:41→海岸線12:54→元猿駐車場13:18

(※)カシミール3D:三次元地図ソフト。異なる地図上の2地点が相互に視認可能かどうかの判断が瞬時に可能。詳細は拙著「望岳雑感」参照。

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