初夏、慌しく !、或いは優雅に、指山〜三俣山
+黒岩山〜泉水山の山旅
  
栗秋和彦

○パート2 午後の部
    
 さて午後は一転して、たおやかな尾根を優雅に巡ろうと企てた。と言うのも同行者は、はるばる門司からの走友、妙齢?のご婦人二名なので、それに相応しい山域を選定せねばならなかったからである。で眼鏡に適ったのは、湯宿の背後に控える黒岩山〜泉水山の稜線漫歩だ。依然として三俣〜星生方面の尾根筋はガスに覆われているし、対照的に黒岩〜泉水方面は稜線すっきり、しかも上泉水山から泉水山方面はボクにとっては未知のルートで、かねてから一度は踏まねばと思っていた山域である。もちろん牧ノ戸峠で車を捨てて、一旦黒岩山まで登れば後は楽チン至極、申し訳ないぐらい見晴らしのいい尾根歩きが楽しめる筈だ。しかし午後2時過ぎに到着した彼女たちの思いは大きく違い、水着持参で硫黄山直下、九州最高所に湧く硫黄の湯を果敢に攻めたいと意気軒昂なのだ。そんなこと言われてもちょっと困った。「あのね、すがもり越方面を見てよ。ガスで全く見えないでしょ。風も強いし身体も冷えるよ」「そうそう、黒岩山はミヤマキリシマの群生地できっときれいだろうなぁ」と畳み掛けるも、「・・・」と黙秘権? を使ってなかなか乗ってこない。ならば「視界の利かない硫黄の湯なんて、ノンアルコールのビールみたいなもんよ!」と上戸コンビへ的確? な比喩で諭しつつ、急場を凌いだが、察するにしぶしぶの合意であったかもしれぬ。せっかく妙齢 ! のご婦人たっての希望なら案内すればいいのではないか ! と外野席なら言いだしかねない。しかし個人的な理由を述べれば、午前中すがもり越からの下山途中に、その前を通ったばっかりだし、再度硫黄山中腹まで登るより、未知のルートの方がエキサイティングなのは言うまでもない、とこじつけたきらいありありでした。(内田姐ごめんなさい)

 さて賑やかな牧ノ戸峠も黒岩山方面は殆ど人影はなく、序盤から静かな山歩きが楽しめた。しかし今が盛りの(筈の)ミヤマキリシマは三俣山同様、花に勢いがなく、散見されただけで、大群落の艶やかさは望むべくもなかった。と言うことは、こじつけ誘い文句に偽り有りではないか!と糾弾のアメアラレも想定され、小心者の筆者はヒヤヒヤであったが、心優しき淑女?たちはそれには触れず、稜線漫歩に満足してくれた筈だ、ホッ。となればミヤマキリシマを背景にした記念撮影では「花は少ないけど、(お二人が入れば)華やかだなぁ」などとリップサービスは忘れない。

 一方、もう一つのウリだった稜線からの眺望は申し分なかった。特に上泉水山付近では相対する星生山腹をバックに一筋の虹がかかり、西日にきらめいて夢の架け橋の如く、非日常の空間を演出したのだ。そのひととき、これを自分の手柄のように「ほら、What a beautiful rainbow that is !」と思わず口走りそうになったが、こんなシーンに遭遇して人は心が癒されるものと思うし、三人ともいにしえの少年・少女時代に戻り、けっこうはしゃぎつつも脳裏にしっかりとパラマウント映像を刻み込んだ筈だ。しかし午前の部と同様、コトは全て順調に運んだ訳ではなく、上泉水から急降下して泉水山、更には長者原へ下る未知の領域でまたしても少し迷った。泉水山の頂が不明だったことと、思い描いていたダイレクトに長者原へ下るルートを見出せなかったこと (加藤会長によると昔は踏跡があったが、今はなかろうよとの弁) で、10分程度余分に森を歩き回ってしまったのだ。

上泉水山にて

しかしこの下山コースは深い森をくぐり抜けると、一面見晴るかすの草原に出くわし、そして道路沿いでは決して見れない、ディープな長者原の森を縦断するなど、知っていたつもりの九重の山野だが、新鮮な発見とともに、心ときめくひとときでもあったように思うのだ。とまぁ、なんやかやの2時間15分の山渓グラビア調プチ山行は、けっこうなエクササイズとなり、喉カラカラ、温泉恋しの体で帰還することになり、湯浴みまったり、屋外バーベキューは騒々しくで、漆黒を迎えてのお開きとなったのは言うまでもない。ホント、やれやれと安堵感、そしてよぉく反芻してみると、自分自身が一番満足した一日だったかもしれないと、ほくそ笑んでいる。

バーベキュー風景

(コースタイム)

パート2 牧ノ戸峠14:40→黒岩山15:05 15→上泉水山15:52 54→下泉水山草原分岐16:25 28→(長者原経由)→星生倶楽部16:55 (宿泊大宴会)  同行者 内田、豊田  (平成16年6月5日)

        おゆぴにすとトップページへ    大分の山目次へ