おおいた日本酒文化研究会 第101回きき酒例会

〜 「愛山」を味わう 〜


 お酒研 第101回きき酒例会リポート

日時 2018年4月27日(金)19時 開会
会場 オステリア・ブーチョ http://bucio.jp/ 大分市府内町  097-574-9373
会費 6000円 

テーマ 「愛山」を味わう  
参加者 25人 


 久しぶりの4月開催ですが、今回は会員のNさんが幹事を引き受けて下さり、お酒は「愛山」という米を使ったもので、会場は大分市の府内町にある「オステリア・ブーチョ」というイタリアンレストランで・・・という、このきき酒会の歴史の中でもなかなかユニークな企画となったわけです。会場はこれまで和食系のお店が多いのですが、イタリアンレストランというのはこれが2度目ですかね。

「愛山」という米

 「愛山」はもともと昭和17年頃兵庫県の試験場で開発されたものだそうで、祖父母にあたる米は「雄町」と「山田錦」です。戦後に一時使われることはあったそうですが、育てづらいなどの理由でほとんど栽培する農家は無くなったところ、「剣菱」の蔵が味付け用に眼をつけて少量を委託栽培するようになったとか。つまりは「剣菱」の独占的な米だったのですが、阪神淡路大震災のため一時継続的な酒造が困難になったため、余った「愛山」が市場に出るようになった、と聞いています。
 この米に注目したのが山形の「十四代」で、山形の蔵元に声をかけて共同で酒造りに取り組んだとか。だいぶ前に東京で「十四代」のこの酒を飲んだことがありますが、やや甘口できれいな酒という印象はあるものの、最近のような人気銘柄米になるとは思いませんでした。最近の生産量は年間500トン以下ぐらいと聞いています。
 今回はその「愛山」を使った酒が9蔵で10銘柄。もちろんこれら以外にも使っているところはいくつもあるわけですが、今回はこれというところは押さえてある、なかなかの選酒となっています。
 
左から(飲んだ順となっています)
出羽桜 天吹 風の森 開運 来福・生 来福 いづみ橋 鶴齢 AKABU 美田

今回のお酒の詳細一覧 (上記写真の左端から)

   銘柄 特定名称 米・精米歩合 備考
出羽桜 純米大吟醸 愛山45% 出羽桜酒造 山形 山形酵母 17度
天吹 裏大吟醸 大吟醸 愛山40% 天吹酒造 佐賀 アル添 アベリア酵母 16度
風の森 無濾過無加水生 純米 愛山80% 油長酒造 奈良 7号系自家酵母 17度
開運 無濾過生原酒 純米 愛山55% 土井酒造場 静岡 静岡酵母NEW5 17度
来福 無濾過生原酒 純米吟醸 愛山50% 来福酒造 茨城 ベゴニア酵母 17度
来福  純米吟醸 愛山50% 来福酒造 茨城 東農分離酵母 15度
いづみ橋 純米 愛山60% 泉橋酒造 神奈川 一回火入れ 17度
鶴齢  純米吟醸 愛山57% 青木酒造 新潟 17度
AKABU 純米吟醸 愛山50% 赤武酒造 岩手 15度
10 美田 愛醸 山廃 純米吟醸 愛山60% みいの寿 福岡 9号系 山廃 16度

 今回のお酒は一升瓶が10本並びましたが、使用米が「愛山」だけというユニークな企画となったのが面白いところです。以前にある杜氏さんから、「愛山は心白が大きく軟質米なので削り難く、50パーセントまでぐらいが無難」と聞いたことがありますが、今回は40%や45%という精米歩合のものもありました。
 私としてはお酒の味に対する影響力の大きさは、米よりも酵母の方が大きいと思っていますので「愛山」だからと喜ぶなんてことはありませんが、企画としてはなかなか興味深い物でした。
 実際に飲んでみての感想としては、同じ米を使いながらけっこう味の違いは出るものだなあ・・と思ったしだいです。

第101回お酒研きき酒忘年会リポート

会場は大分市府内町のイタリアン

 府内五番街の道沿い「オステリア・ブーチョ」、このお店は表から見ただけではそう大きいとは思いませんが、入って左手にはけっこう広い宴会場があり、今回の参加者25人にはわりあいとゆったりとした会場となりました。

 オステリアと言う言葉はイタリア語でしょうか、あまり大きくない居酒屋のような店のことを意味していたと思います。ブーチョとは、「穴」という意味らしいですが、やはりイタリア語か。
 まあとにかく、なかなかユニークなお店だと思いました。
 

まず先入観ナシで・・・

 今回の幹事はなかなか凝ったことを考えてくれました。
 「先入観ナシに味わって貰いたい」ということで、酒瓶に新聞紙を巻き、その上にナンバーを打った紙を巻くという手間のかかることをやりました。しかも栓は入れ替えてあるという、これは本格的なブラインド・テストですよ。

 室温がやや上がっていたためか、酒の温度も少しづつ上がったようで、最初の印象とあとで飲み直した印象が違うお酒が多かったと思います。温度が上がるとやや旨味が出るというか、様々な雑味を感じるようになるお酒が多かったように思います。

イタリアンは2度目かな

 このきき酒会の歴史の中では、もう10年以上前かと思いますが、大分市中央町の「バールふらいぱん」というお店を会場にして開催したことがあります。 あれがたしかイタリアン系のお店だったと記憶しています。その時も日本酒に合う料理を考えてくれたのですが、お店がやや狭くて人数的に制約があり、その後は開催の機会がありませんでした。

 今回もイタリアンですが、特に脂っこいと言うことは無く、日本酒の味の邪魔をするような味も無くてなかなか気合いの入った料理だったと思います。

さすがの「出羽桜」「開運」

 ブラインドでしたが、最初に飲んだ酒が比較的バランス良く欠点の少ない酒、と思ったら「出羽桜」でした。ただ、僅かに苦味が引っかかる感じ。
 「天吹」はすっきりきれいなのですが、何か舌に残る感じがちと気になり、香りも愛山という米に合うのか気にはなった。
 「風の森」は生のせいかガス味が強く、味もちとクセを感じて「これは風の森」とイッパツで気がついた。
 「開運」もきれいでバランスの良い酒でしたが、飲んだあと舌の奥に僅かに苦味を感じたのが気になった。
 覆い紙を取り、「出羽桜」「開運」を見て、ああやっぱり!と思った。

同じ蔵で米は同じでも味は違う

 「来福」は茨城の酒で同じ愛山を使うのですが、酒の味としてはまったくと言って良いほど違うものでした。私の評価としては左側「生原酒」の方が味もしっかりしていると思いました。「火入れ」の方は酵母が違うためか、いささか軽くて特徴の無い酒だとメモには書いてあります。

 「いづみ橋」には「きらきらとんぼ」というサブタイトルがついていますが、愛山使用は今年からのようです。やや甘口ですっきりしていますが、もう少し味に主義主張があっても良いかと思いました。

バランスは良かった「鶴齢」

 「鶴齢」はやっぱり鶴齢の味で、まあ軽快ですっきりしています。ただ温度が上がると多少の雑味を感じますが、欠点というほどでは無く、悪くない造りだと感じました。もう少し愛山らしさがあると・・という感じかな。

 「AKABU」は酸もしっかりあって重たくは無く、それなりに良くできた酒だと思いましたが、アルコール度数が低いせいか奥行きを感じない。あと1度上げると味もしっかりするのに・・・と思った。
 「美田」は「山廃」なのだけど酸味も強くは無く、かといって甘口というほどでは無く、味の主張もそう感じられないのはなぜだろう。

 今回のお酒について「評価アンケート」があり、その結果としては人気第1位は「天吹」だとのこと。
 私の採点では第1位は「出羽桜」でした。まあ、好みは人様々ですが、今回の私の(5位までの)採点と感想は以下の通りです。

 5点満点で採点したのですが、最初の酒に3.5点を付けたためにそれ以降の採点が低いものが多くなり、最後に見直したものの(温度変化もあり)全ての採点をやり直すまでには至らなかったため、いささか厳しい点付けになったと反省しています。
 まあ、私の好みでは無くとも、「ハズレ」というお酒はありませんでした。
順位 銘柄 私の採点 評価・感想など
出羽桜 4.0 やや甘口という印象だが全体としては良いバランス。ただ僅かに苦味がある。
開運 3.5 きれいで良いバランス。そこそこ力強さもあってなかなか良いがやや苦味が残る。
鶴齢 3.5 軽快感あり、多少の雑味はあるが全体のバランスは悪くない。愛山感は乏しい。
天吹 3.0 多少の苦味・雑味を感じるが、酒としては悪くない。香りは私の好みでは無い。
来福 3.0 穏やかな酒、言い換えれば個性が無いというか、特徴があまり無いという感じ。
※「開運」「鶴齢」は同点ですが、「開運」の方が僅かに良いかと思い上位に。同じく「天吹」と「来福」も酒質としては僅かながら差があると考え「天吹」を上位としましたが、それらは全て私の好みによるものです。

 というわけで、最後に参加者全員で記念写真です。25人の皆さん楽しそうですね。

 珍しいイタリアン料理でのきき酒会でしたが、日本酒に違和感はありませんでした。逆に、日本酒の幅の広さ・・と言った方が良いのかもしれない。
 「愛山」を楽しむことができました。

 ご参加の皆さんご苦労さま。幹事のNさんほんとにお疲れ様でした。 


次回は毎年恒例、第102回「真夏の燗酒大会」です。


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