09:脇役の『』
置いていかれるのは怖い。
実際なにもかも訳が分からなくて怖いのは、のほうだとシャルナークもわかっている。
けれどはいつまで目の前にいるか分からない存在で、少し目を放した隙に紙面に戻ってしまうかもしれない存在で、時間が経てばもしかしたらこの世界では死んでしまう存在になっているかもしれない。
紙面から人が飛び出してくる話なんて、異世界に行ったり異世界から人が来たりな話は、物語としてはあふれて過ぎてて逆に新鮮味が無いほどゲームにも漫画にも使われている。少し調べただけで、ごっそり検索に引っ掛かる漫画のタイトル、ゲームのあらすじ、アニメの公式サイト。
けれど実際目の前にそんな境遇のキャラクターが降って湧いてくることなど皆無で、当たり前だが皆現実ではないからこそ楽しむ設定のはずだった。
でも、は目の前で生きている。
「あ、これもです。シャルナークさんとフィンクスさん、ことごとく! 私の趣味ドンピシャですよ!」
「そりゃ良かった。女の趣味なんて分かんねぇからな」
「そうそう、スーツ姿だったから傾向すら分からなかったし。良かった、気に入ってくれて」
「何がどう分からないとか、どの口が言うんですか。この口ですか、この口ですか」
笑って会話して、多少のスキンシップも吊り橋効果か出来るようになった空間の中、フィンクスもシャルナークもしみじみと現状の不安定さを噛み締めていた。
はいついなくなるか分からない。こんなに楽しそうに笑っていても、いつ紙と墨に戻ってしまうか分からない。
『私を置いていかないでください』
けれど、もまた違った形で不安で不安定な環境だと認識しているのだと、二人もきちんと理解した。
その中で、フィンクスとシャルナークを気遣っていることも、よく分かった。
それでこそだ! と思うと同時に、この馬鹿でお人よしででも普通の悪いことも考える人間なを実感できて、不思議だという気持ちが強くなる。
会話を続けながら、ふとした瞬間の夫となるキャラクターの心情と重なる部分を自分の中に発見し、二次元キャラクターが三次元化したとはいえ、惚れるはずないだろうと頭を振ってしまう。
たとえ戯れで「は俺の嫁」などと発言したことがあったりなかったりしても、実際目の前にいたらそのようなことを思うはずもない。なぜなら彼女は二次元の存在で、フィンクスやシャルナークは三次元の存在だからだ。
「とか言っても、今は三次元になってるんだけどさ」
「独り言駄々漏れだぞ、お前」
シャルナークの独り言に、呆れ声のフィンクスが突っ込む。
はしゃいでいるには聞こえない程度の音量ではあったが、フィンクスには呪詛のようにとつとつと聞こえてきて怖かったりする。
シャルナークはそんな突っ込みにも動じず、笑顔のままへと言葉を返していた。
「ま、おれは元々センス良いからね。これで趣味が違うって言われたら、はただのセンスのないひ」
「はい、ダウト。なんですかシャルナークさん、見た目と違ってナルシストですか意外性ありすぎです」
「そこが女の子を惹きつけるってね」
「うわ、お前キモい」
知らない人間が聞けば、気の置けない人間同士の朗らかな会話としか思えない言葉のやりとり。
呆れ顔のに自信ありげな笑顔のシャルナーク、ドン引きで体も後ろにのけぞっているフィンクス。
それぞれの手には服だかアクセサリーだか日常雑貨だかを持っており、ああだこうだといいながらも笑い声があふれている。
とりあえずひと段落ついて、それらを片付けても残っているのは部屋の問題と、シャルナークとフィンクスは機嫌よく飲み物に口をつけているを横目で見つつ考えた。
が不審に思わない程度に、けれどすばやく。
セキュリティは万全に。万が一と外に出かけるようになっても、安全な地域で。
絶対にテレビや街と隔離された場所が好ましい。この世界でのというキャラクターの人気ゆえに。
「あー、んで、いつだっけか引越し」
とりあえず先に進まねばと、フィンクスが当たり前のように口にする。
「二日後だったっけ? ー、ごめんちょっといいー?」
「なんですかー?」
小物は入っていた袋に、洋服類は畳んでと片付け始めていたは、すぐに二人の傍に身を寄せる。きちんと彼らの前で正座をして聞く体勢を整えたは、なんでしょうとしっかりと彼ら二人を見て笑った。
「……」
「……」
思わず無言になって見つめてしまう二人だったが、の背景に点描と花をあしらった華やかなトーン描写が見えた気がした。いや、あった。そんな気がしただけだよな、うんそうだよな、などと二人とも目と目で会話を済ませる。が。
笑顔でにこにこ、そしてどこか浮かれているような嬉しそうにほころんだ笑顔は、少し傾げられた首と膝の上にきちんと重ねられた両手まで視線を誘導していって、ますます朗らかで可愛らしく背景に点描と花畑を飛ばしてくる。
「……」
「……」
あ、原作で新婚になったばかりの頃のみたいだと、二人してちょっと動揺した。原作ではすぐに次のコマで、の旦那が顔を真っ赤にしたコマが描かれていたのに、目で探してもそんなものは当たり前だが見えない。正真正銘、自分たちに向けられている対応だ。だがしかし、腐っても鯛。動揺しても幻影旅団。二人はそのまま、なんの問題もなく口を開いた。
「今日こっちにきたばっかりのには悪いんだけど、近々ここ引っ越すんだ。慣れる間もなくってごめん」
「ま、荷物も少ねぇからちゃちゃっとやるつもりだったんだけどよ、悪ぃな」
「…………そんな気忙しい時期にお邪魔してしまい、申し訳ありません」
深々頭を下げかけたに、慌てて手を差し出したフィンクスがそれを阻止する。
反射的に動きを止めたの両肩に触れようとして、一瞬フィンクスはためらった。
触れて、顔を上げさせて。そしてその顔がではなく別の女の顔になっていたらと、想像をしてしまっていた。先ほどは新妻バージョンおれが夫、みたいな想像をしたのにもかかわらず。脳の回転は悪い方向に絶好調。
あらゆる方向に多少浮かれていても、やはり二次元が三次元になって飛び出してくるだなんて、非現実的なことが起こってたまるかとフィンクスの頭のどこかで思ってしまう。それこそ今更過ぎてへそで茶が沸くほどの現実逃避なのだが。
けれど体は正直で、フィンクスの性分に沿ったものだった。
「気にすんな。つーか、ほんと悪ぃな」
ひょういと両手は軽々との上半身を起こして、しっかり両の目で彼女の顔を確認していた。そんな思惑が伝わるはずもなく、は目を丸くしていて、すぐに嬉しそうに笑い出した。
「いえ、はい、ありがとうございます」
では、購入していただいた私の荷物と、お二人の荷物まとめちゃいましょうね。
軽い浮かれ調子のまま、はフィンクスとシャルナークへと視線を向けながら、早速立ち上がって行動を開始した。
先ほどまで広げられていた荷物は端に寄せられていたのだが、はてきぱきと小さく畳みなおして購入の際渡された袋たちに入れ込み始め、靴が入っていた箱などのかさばるものも、音を立てて処分する。
親の背を見て子は育つというが、『うらおもて』の主人公格たちが証拠を残さぬよう見切りをつければ早かったり、物を捨てる際の行動力と処分力は、テレビで見るカリスマ整理整頓主婦もはだしで逃げ出す手早さだったことを、思い出す。
「ケイコの姪っ子だなぁ……」
「血族の印が、こんなところにまで現れてるとはな」
原作内では、主人公であるサトルも母親のケイコの背を見て育ち、自分の分は自分で片付ける性質を見せていた。ケイコたち女性陣は整理整頓が上手いのだが、自分以外の家族や周りの人間の分は、何度か手伝ってもすぐに手を貸さなくなる。
ここで手を出しすぎたら、自分で片付けることをしなくなると分かっていたのだろう。
おかげ様で、主人公一族に物を片付けられない人間は居ない。居ないのだが。
正直、脇役の『』がその整理整頓の手腕を見せ付ける場面はなかった。多分、もそうなのだろうと推測はされていたが。
目の前であっという間に、女一人でも持てそうなサイズにまとめられていく生活用品たち。
これは確かに、一緒に暮らしてしまえば結婚したくなるかもしれない。
「料理、最初はそこまで上手くなかったよな」
「旦那を保護する前後くらいから、本格的にやりだしたはずだよ」
思わず真剣になにやら考え出す二人に、が気づいて首をかしげた。
「まとめた荷物は、どこに置けばいいですか? お二人の荷物とかも、一緒にまとめておきましょうか」
振り返りざまにの髪が、ふんわりと風にさらわれる。点描が舞う。キラキラトーンがの表情をまぶしくさせる。本人は何の気なしに振り向き、首を傾げただけの単純な動きをしただけだというのに、シャルナークとフィンクスは思わずまぶしさに片手で顔に陰を作って目を細めた。
「……どうされました?」
もちろん、話しかけただけで男二人がそんな不審な行動をとれば、も当たり前にいぶかしがる。
が、男二人は先ほどの自分がの夫妄想を復活させてしまい、ちょっと待ってとばかりに片手を上げて、胸を押さえて深呼吸を繰り返す。
「……苦しいんですか?」
近づき二人の顔を交互に覗き込んでくるに、さらにノックアウトされた二人はぜーぜー言いながら軽く床に崩れ落ちるが、息も絶え絶えな中言葉をつむいだ。
「お、おれたちのぶんも……」
「や、やっといて、く、くれ……」
「せ、せいりとか、じゅんじょとか、きにしないから……っ!」
だから、だから今はちょっと心臓落ち着くまで待って!!
最後の言葉は二人とも口に出さなかったが、顔を真っ赤にして床に頭をつけるほど崩れ落ちてしまえば、もなんとなく好意的なにおいを感じて、なるほどこれは放っておいて良いんだなと「わかりました。後でお水持ってきますね」と少しだけ二人の様子に注意しようと心に留めながら、荷物整理に戻っていった。
「っ!」
「ぅあっ!」
離れる際にの手が二人の額に触れて体温を確かめていったことで、より二人が気持ち良いダメージを受けて身もだえていたことは、背を向けたのあずかり知らぬことではあったが、本人は「手当て」という純然たる行為で触れていったと言うことを原作を読んでいた二人は知っていたので、もう余計に心臓に気持ち良いほどの負担が掛かっていた。
「……む、むぼうび!! おれじゃなかったら、ら、ちくしょう!」
「……だから、夫キャラ拾ったんだろー……ぜ。ああちくしょうしんぞうにわりぃおれもういいきょうしんでもいい」
二次元ばんざーい、などと小さく呟いた二人は、その呟きこそが聞いてしまったら「きゃ、キャラ崩壊!?」などと驚かれるとも知らず、鼻歌を歌いながら初対面の男二人の荷物を丁寧に、しかし隙間なく袋やダンボールに詰めていくへと視線を向ける。
ガスガス盗って来たコンビニ弁当の残骸はゴミ袋に詰められ、どこから出てきたのかしなびた果実なども眉をひそめるだけで処理され、洗ってない衣類などは軽く嗅いで別袋へ。
ただの区別のために嗅いだのだと解ってはいるが、「、が俺の洋服嗅いだ……!?」などとうろたえる男二人。ちらりとその声が聞こえたは視線だけを二人に向けるが、身悶えている二人はそれ所じゃない。照れ隠しかと見当をつけたは、また作業に没頭する。
が、の内心も中々修羅場と化していた。
(シャルナークとフィンクスの服を、流れだとはいえ、嗅いでしまった、だと……!?)
けれど火照っていく頬や耳とは裏腹に、の手は着々とシャルナークやフィンクスが放っておいた数少ない荷物と、隠れていたが確かな存在感を放つゴミの処理を行っていた。
時折茶色と言うか、赤黒かったんじゃないかなーと推測されるような染みがちょっぴり見え隠れするものは、見なかった振りで洗濯物用の袋へと小さく畳んでつめていく。
触らぬ神にたたりなし。男二人が身悶えているうちに、はすっかり見える範囲の荷物整理を完了させていた。
「荷物、他の部屋にもありますか? 一応見える範囲は詰めてみたんですけど」
男の人の部屋とはいえ、荷物少ないなと思いつつ。けれど旅団だから荷物最小限なのかな? などと考察もしながらシャルナークたちの傍に座りなおした。けれど、彼女の不思議そうな顔で居ながらも片付け終わった満足感が見え隠れする笑顔に、ようやく落ち着きを取り戻した男二人も笑い返した。
「あ、うん! 後はほとんど捨てるものだから自分たちでやるよ!」
「お、おう! 身軽なもんだからな!」
よっこいせと立ち上がったフィンクスは電化製品をどうするかとに相談し始め、シャルナークは別部屋のパソコン機器類をまとめてくると姿を消した。
時折かき上げられる髪から覗くの横顔に、フィンクスがドキッと胸を高鳴らせたり、シャルナークが運び出していくパソコン機器類に目を輝かせるの眼差しにシャルナークが和んだりと、かねがね穏やかに時は過ぎていった。
「あ、今日は床でも良いので寝かせてもらっても」
「布団盗ってくるわ」
「フィンクス。レンタル代は任せた」
が忘れてたとばかりに言い出すと、フィンクスが即座に物騒なことを口走る。
語感としては『ちょっと別部屋から運んできます』程度なので、は頷いたが、シャルナークはその意味を正確に汲み取ってフィンクスの足を蹴り飛ばした。
「いてぇっ!」
「お前、に盗品使わせる気? え? ありえないだろ? だから代金はフィンクス持ちで」
「はぁ!?」
「うるさいんだけど?」
小声でぼそぼそっと囁いたシャルナークの目は据わっていた。反論しかけたフィンクスも、大きな声にびくついたを見て、そういえばは世間一般的な感性の持ち主で、犯罪行為がもちろん嫌いだということを思い出した。
もちろん、無意味な怒声なども得意としているはずもない。フィンクスが視線を向ければ、大丈夫だと言うように笑って見せるところも、大人としては当たり前の反応だが、健気にも見える。ちょっとときめいたフィンクスにシャルナークの蹴り第二弾が炸裂した。今度は声をこらえたフィンクスはえらい。は過激なスキンシップだと思いながらも、いい音がしたフィンクスの足を案じた。
「っ!?……覚えとけよ」
「もう忘れたから早く行ってくれる?」
笑うシャルナークは、パソコンを運び出す合間に携帯で次の部屋を押さえたらしく、「仮部屋だけどね」とそこへ布団を運ぶようフィンクスに指示を出した。
「その間にと荷物運んどくから」
「……おう。見せるなよ」
「当たり前」
現在位置はそこそこの街中のアパートの一室。一歩外に出れば当たり前の光景として、あらゆるショッピングが楽しめるが、そのあらゆる場所に本がありポスターがありドラマの宣伝がありアニメの告知がある。
自身が描かれていることは少なくなったが、の従弟であり身内である多くが主役級。二次元と三次元の違いはあれど、共通点は分かりやすい。というか、を見れば解るが、思った以上に二次元キャラクターの三次元化は解りやすく、また逆も然りで、にとっても三次元が二次元になった家族たちは判別しやすいだろう。
ばれたら説明がややこしい上に、自分たちの行動理由を話さなければならなくなる。
さすがにミーハー心と独占欲などと言えば、が引くのは目に見えている。誰が好きなキャラにドン引きされたい奴が居るというのか。
シャルナークはと一緒に玄関までフィンクスを見送り、に少し待つように告げて自分の荷物を車に運び込んだ。
荷物は重いからとか、個人的なもので触られたくないだとか適当に言い訳して、が外に出ることを阻止する。
もちろん後で外に出るわけだが、それはそれで対処のしようがある。
外は危ないからと言えば、はシャルナークが思うよりたやすく納得を示すし、細々とした物をシャルナークが運びやすいように渡してくれる。一々「お願いします」や「ありがとうございます」を笑顔で言うし、大人しく室内で待っていてと言えば頷くだけで、質問もせずに笑って一人室内に戻っていく。
従順すぎるくらいに従順で、けれどシャルナークを気遣うようなそぶりと邪魔をしてはいけないと言う自制心もちらりと見せていて、これがテクニックならばは相当な悪女だと思わずシャルナークは真顔になってしまった。
意図して悪女になれる器なら、はとっくに主人公たちのために敵側をどうこう出来ているだろうから、その線は全くないのだが。
とにかく、シャルナークはとっとと車内に目隠しを施して、爆走しながらも振動が少ないルートを割り出して、さらには騒がしくも音声でテレビなどのCMの流れない場所をピックアップして、準備万端整える。
「、行こう」
「はい、シャルナークさん」
自分の手荷物だけを持たせて、シャルナークがちょっと急ぎたいからとあれこれ理由をつけて、照れて顔を真っ赤にして硬直するに笑いながら、彼女を横抱きにして車に連れ込んだ。
抱きしめたはお世辞にも細いとはいえなかったが、嘘でもシャルナークが重いといえる体重ではなかった。平均と言えば一般女性として平均、けれどシャルナークたちにとっては手荷物程度に重さに感じる。
それでも体重があり体積がある、三次元の存在。
身体を洗った所為で香るボディーソープやらシャンプーリンスの匂いは、二次元では到底感じられないもの。
緊張しすぎで硬直した筋肉はの心情を表しているし、微妙に揺れる視線はもう一押しすれば気絶するのではないかと言うほどの動揺を見せていた。
胸もしっかり感じられるし、それはシャルナークの胸板に当たっていた。サイズは公式ファンブックにも書いていたので知っているが、実際にそこから目測も合わせて買ってきた下着を、目の前のが着用していると思うと。
「……移動中は外見ないでほしいんだけど、いい?」
「はい。でも窓は開けて良いですか? 少し酔っちゃうかも知れないので」
「それくらいだったら良いよ。じゃ、出発」
わざと自分の意識を逸らしたシャルナークの言葉に、は何の疑いもなく笑って頷く。
後部座席に座らせたの視界からは前方すら見えない。シャルナークが見えないように覆いを施したし、シャルナークの姿もシャルナークが簡易カーテンを開かなければ見えない。
本来なら怖がってもいいシチュエーションだというのに、はシャルナークの目から見ても怯えの色すら感じさせない。
変に肝が据わっているのは、やはり一族の血筋かなとか思いながらアクセルを踏み込むシャルナーク。
車外から吹き込んでくる風に髪を揺らし、目を瞑って心地良さそうにしているをバックミラー越しに見ながら、微笑んで道筋を急いだ。
(シャルナークさん、フィンクスさんに何を頼んだんだろう。幻影旅団が布団レンタルとか、ないわー)
(いや、もしかすると本当にレンタル。……二人の様子からは、レンタルより購入の線が強いかな?)
(初対面の男二人に全ての金を出させる女。ここだけ聞くと本当に悪い女だ)
(…………シャルナークさんのお願いは基本聞こう。危険が危ないもとい、命が危なそうだ)
(優しいうちに仲良くなっておかないと怖いけど、普通に親切すぎて申し訳ない)
(姫抱きとかないですよないですったら、この年で! ぎゃー!!)
(というか、シャルナークさんのパソコンにはほんと、何が詰まってるのか正直知りたい)
(……外の音は普通の街角っぽいけど、うっかり開けてヒソカ(仮)とかクロロ(仮)とかゾルディック(仮)とか見えちゃったら怖いし、言う事はちゃんと聞いておこう)
(……代わりに運転したいけど、絶対知らない道だから怖いし無理だね)
(それ以前にこっちの世界では無免許になるのかな?)
(移動にどれくらい掛かるんだろう。酔い止め飲んでないし、持つかなー)
シャルナークが心配する以上に、のんきになっていくだった。