合流地点〜中の旅団員
「あー……、なにやってっかなー」
「誰のことよ」
パクノダが問いかけると、ノブナガは力の抜けた顔で指を動かす。両手の人差し指が動き、四角く何かを縁取るような形を浮き上がらせた。
「迷子札」
「ああ。……雨でも眺めて、サテラに今日の話でもしてるんじゃないかしら」
「それか、「あれ」に触ってるとか」
割り込んできたシャルナークの一言に、ノブナガとパクノダの視線に剣呑な光が混じる。けれどそれにシャルナークが肩をすくめる間もなく、今度はシズクの声が割り込んできた。
「迷子札と「あれ」って、なにか関係があるの?」
あたし何も知らないから教えてよと言った、シズク特有ののんびりした表情が三人に向けられ、結論の出ていない三人は口をつぐむ。その様子に残りのメンバーも興味津々と言った様子で視線を向けてくる。
重ねて言うことになるが、この場にいるメンバーは大変退屈しきっていた。
「迷子札って、あの迷子札だよな。なに、お前たちなにやったんだよ」
「迷子札が主語な訳ないね。迷子札に関係のある人間に決まてるよ。で、誰が「あれ」に関係してる言うか? 下見のときに見つけたか? 今日すぐ向かうか?」
フィンクスがまだ話そうとしているときに、フェイタンはそれを無視して矢継ぎ早にまくし立てた。退屈などうんざりだといった表情が、一変して興味を引かれた子供のようなものになる。
ノブナガは説明を放棄しそっぽを向き、パクノダはシャルナークへと視線を向ける。必然的に、説明係はシャルナークと決まってしまった。小さくため息がこぼれる。
そしてシャルナークが口を開こうとしたとき、仮宿近くからクロロの気配がいきなり出現した。一斉に外へと皆が視線を向けるが、特に変化は見当たらない。けれど、クロロのその気配は揺らぐかのように頼りないものに感じられた。
「……団長?」
フィンクスが怪訝そうに呟くが、返事をする人物はいまだこの部屋にいない。そしてもうひとつ、何かの気配がするがそれが何か掴めない。
「なんだぁ?」
先ほど来たばかりのウボォーが首をかしげる。けれどその気配自体に殺意はなく、感じられるのは少々の警戒心みたいなもの。誰一人物音は立てないが、やはり疑問が口をついて出る。
「着いたよ」
階下で聞き慣れたクロロの声が響き、何人かは野次馬根性でそこを覗き込む。あ、と誰かが声を上げたかと思うと、覗き込んでいたノブナガがひっくり返った。
「どうしたのよ」
「やられた」
え、なになにと誰かが問いかける前に、フィンクスとフェイタンが不満そうにブーイングをあげる。なにやらぶつくさ文句を言って、今にも階下に飛び降りていきそうな具合だ。ノブナガに話しかけようとしていたシャルナークの視線が、二人に向く。
ウボォーは覗き込んだはいいが、首を傾げて元の瓦礫の山に座り込む。
「なんだって?」
ようやくシャルナークが声を上げると、ウボォーは首をかしげて分からねぇと呟くだけ。ノブナガは天井を仰いで床を転げ始めていた。
「団長、連れてきやがった! あいつが関係あるか、確定してねぇのによ!」
「え、嘘!? もしかしてあの子、連れてきちゃったの?」
「……まさか、あの子って、今日会ったあの子じゃないよね。ね」
忌々しそうに叫びだすノブナガと、それに反応して顔色を青く変えるパクノダ、動きも表情すら止めて呟くシャルナークに、もう一度全員の視線が集まる。
「この階の部屋で、大概皆集まるな。……ほら、集まってる」
「あ、団長」
コルトピの呼び声に、顔を上げたクロロは辺りを見回した。
「後はマチとヒソカだけか」
その後ろにあの子を引き連れて。