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念願のブナ広場キャンプと花の縦走路で祖母傾山系の行末を考える
で稜線一帯の植生は若葉が芽吹き始めたブナ、ミズナラ、ツガの大木、古木に加え、肌をあらわにした少数派のヒメシャラや名も無き灌木類 (筆者が知らないだけ)が明るい尾根の主役たちで、気持ちのいい縦走路がつづく。が、この山系では織り込み済みの光景であろう。そしてこの時期のご褒美はところどころに咲く白い花のムシカリ、妖艶なピンクに染まったツクシシャクナゲ、凛として潔いミツバツツジの彩などを観賞できること。なかなか麗しの花群たちだが、尾平越付近では本命のアケボノツツジは大量に落下した花びらを認めるばかりで、お預けのままである。早く出逢いたい一心で1400m付近まで登ると、突然目の前の一角に“ぼんぼり”然とした本命が現れて、ひととき息を飲んだ。よく周りを見渡すと頭上にも北側斜面下にも、南側にもポッ、ポッと樹間が艶やかである。ちょっとした群落だったが、アケボノツツジの不思議さは、小枝に葉を持たず直接花びらのみがぶら下がる、そのエキセントリックさにある。しかし色合いはまこと日本的で文字通り曙色のシックな艶やかさで、我が身を惑わすのだ。 そんなこんなで以降も何回かアケボノツツジの群落に遭遇しては感嘆しつつ、41年ぶりに(※3)縦走路の感触を味わったが、山頂直下のアップダウンには殆ど空身の体でも、息づかいは荒くけっこう手強かった。その意味でたかだか1時間半にも満たない、だらだら登りに音を上げそうになった体たらくに対して、数年前の二人の足跡(※1)はまさに偉業だったんだなぁ、と改めて思い出(いず)った次第。二人ともちょっと前までは“現役”だったのだ、ホントに! してようやく辿り着いた古祖母山(南峰)からの宮崎県側のたおやかな眺めも、北峰露岩からの祖母山〜障子岳の男性的風貌と奥岳渓谷の深く切れ込んだ急峻な様も新鮮な景観として捉えたのだった。つまり41年前の記憶を蘇えらせようとすること自体無理な注文であって、「忘却こそ人の営みの証なのさ」と開き直るしかあるまい、アハハ・・・。 さて復路はほぼ1時間で尾平越へ戻り、更に東進して荷を拾い、ブナ広場には陽もまだ高い午後3時半に到着。大本命、ブナ広場キャンプが始まったが、一帯のシチュエーションは筆者の物見遊山的表現より、かって“ルビコン川を渡った”感慨を秘めて綴った挟間の以下の文章に委ねたい。 さて二日目は縦走路を東へ取り、本谷山まで足を延ばした。なぜ本谷山かは古祖母山と同様に、笠松山はちょっと遠いし、九折越まではとてもとてもと言った単純理由である。一方、挾間もこの山に対しては強いこだわりはなく、「登り詰めた最初のピークで折り返そうぞ、時間的にも合うしな」とえらく淡泊なのだ。うんうん、分かるよ。祖母・傾連峰にあって名前も山容も地味一徹な山だとは認めよう。しかし標高1643mはこれ以東において優るものなし。長大な尾根を従えた重厚な山容は誠実さが滲み出ているぜ、と秀でた点をあげつらっても、やはり筋金入りの地味さ・寡黙さを補うものではないのだ。ゆえに東隣の笠松山とともに祖母・傾連峰の縦走路上もっともマイナーな山域である。おまけに1400mを越えたあたりから上部は霧に覆われ、ただでさえ眺望がきかぬ上に、湿っぽさも加わっての登路がつづいた。それでも途中2..3ヶ所、アケボノツツジ群と出逢い、心和むシーンや千手観音と見まごうブナの老木に魅せられたりと、それなりの見所は用意してくれたものと思っている。 しかしこの縦走路一帯を概観するに圧倒的なインパクトで我々に迫ったのは、いたるところで哀れな姿をさらけ出していた木々の立ち枯れ風景である。鹿の食害によるのは言わずもがなだが、これほど広範囲に無残な原野を晒していたとは驚きを通り越して言葉を失い、そしてだんだんと憂いが募ってきたのだ。 そこで短絡的に何ができるかを思い浮かべてみたが、一個人としては殆ど何も出来ないことに容易く気付く。せめて現状を広く知ってもらい、地域はもとより国レベルでの何らかの行動、対策が施されて然るべきかもしれぬが、個人的には抜本的対策などイメージすることすら出来ないのだ。山村域の人口減少と高齢化により駆除する側のマンパワー低下は著しいし、国、地方とも予算は限られていよう。荒唐無稽的には異国からオオカミを移送させたり、本州からツキノワグマの強制移住も有りだな、などと絵空事しか浮かばず、並行して植生保全や森の復活策も同じ理由で壁に当たるのは自明だ。 とまれ41年ぶりに縦走路の一部を歩いてみて、(昔の記憶は薄れているにも拘らず)その変容ぶりに心が傷んだことは、単なるノスタルジアに因るものではなく、祖母・傾山系に対する思い入れの再認識と、環境悪化に対する無力感に苛むといった複雑な心境を併せ持ってのことである。それでもはっきり言えることは九州屈指のこの自然豊かな長大尾根を、後世にきっちりと残す責務が我々にあるということ。その意味で傍観者に陥ることなく、常に関心を持ってこれからの推移を見守っていくことが肝要であって、物見遊山なブナ広場キャンプの筈が、けっこう重たくなったことに苦笑しながらお開きとしたい。う〜ん、こんな筈じゃなかったのに。 (※1) “おゆぴにすと”HP、「大分の山」欄の「チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走その1〜その7」参照 (※2) 同上、「チャレンジ!祖母傾連峰完全縦走その5〜大分登高会の末裔ついに完全縦走なる!」参照 (※3) 1971年霜月に神原〜祖母〜傾〜大白谷を縦走して以来、古祖母山〜本谷山間に限っては41年振りに足を踏み入れた。 (参加者) 挟間、栗秋 (コースタイム) 5/3 大分駅8:40⇒(車・途中買出し)⇒尾平トンネル南側(登山口)11:06 31→本谷山側稜線12:00 10→尾平越12:26 28→(途中昼食等)→古祖母山13:45 14:06→尾平越15:07→本谷山側稜線15:22 28→ブナの広場15:35 キャンプ 5/4 ブナの広場8:07→三国岩9:22 23→本谷山9:33 44→ブナの広場10:33 11:07→本谷山側稜線11:16
17→尾平トンネル南側11:33
45⇒(車)⇒竹田市総合運動公園13:00(昼食)14:00⇒(車)⇒七里田温泉14:40(七里田温泉館入湯) 15:28⇒(車)⇒大分駅16:32 (平成24年5月3〜4日) |