詩117
スケッチ その4
2016.4.30
若いカップルが
あやめ池を覗いている
たっぷり水が張られて
あやめは
今が見ごろ
ふたりは肩を寄せ合い
無言で覗いている
あやめの花影を掠めて
白い雲が流れていく
白い雲はふたりの思いをのせて
ゆっくり流れていく──
やがて、白い雲は消え去ったが……
まだふたりは立ち去らずに
居つづけている
池の面にはふたりの姿が
静かに
ほんのりと映り込んでいる
魂の合わさったさまでーーー
七瀬自然公園のあやめ池にて
紫陽花の道ーある思い出に
2016.6.23
紫陽花の咲く小道を
わたしはひとり歩いて行く
かつてこの道を共に歩いた女ひと
その女もすでに亡く
わたしは淋しくこの道を通っている
すでに杖に寄り
ただ一つの面影を追って行く
わたしの目の前に
美しく続く紫陽花の道───
ああ わたしがその女の面影を
抱き続け
人生を歩き続けるかぎり
この紫陽花の小道は終わっても
わたしの中の紫陽花の道は
どこまでも続くであろう