雲
2014.12.15
都会のビルの挟間をゆく
雲
大きな窓ガラスに
その影を投影しながら流れてゆく
雲
わたしは珈琲を飲みながら
今 何気なくそれを眺めている
すると 遠い遠い記憶がよみがえる
それは 田舎の小学校の記憶
授業に倦んでぼんやり眺める
窓のそと
雲はゆっくり流れていて
心は雲の行方を追ってゆく
思えば今のわたしが
その雲
流れ流れてここまでやってきた
わたしの人生の旅
思えば遠くに来たものだ
都会のビルの上階にいて
また わたしはゆく雲を目で追っているが
高層ビルの挟間を流れてゆく雲は
すぐに ビルの向こうに隠れてしまい
行方はわからない
そして わたしの人生の旅もまたーーー
凧
2015.1.14
冬晴れの
空を
凧が揚がっていく
凧は
しだいに浮力をつけて
揚がっていく
凧は
どんどん糸を伸ばしていく
空の高さを計っているようだ
アンリ・ルソーの絵
2015.1.10
わたしはアンリ・ルソーの絵が
とくに好きだという訳でもない
その絵はとても上手とは言えないし
洗練されたところもない
アンリ・ルソーの絵に
深いイミがあるなどとは
思わない
わたしの好む画家は
ほかに たくさんいる──
にもかかわらず
わたしは どんな画家の画集よりも
多分 ルソーの画集を繁く観る
ヘタな絵だな と思いながら
美術館に足を運べば
立派な絵が所得たりと飾ってある
美術館にあるほどの絵は
どの絵も立派に描かれていて
そして どの絵もみんな叫んでいる
──立ち止まって観てくれ
──よく観てくれと
わたしはその叫び声に促されながら
立ち止まり
立ち止まりつつ
展示室をまめに観てまわり
疲れて美術館を出ていくが
そんな時
またルソーの絵が恋しくなり
ついまた観てしまう
額縁
2015.1.16
美しい風景を見ると
とっさに切り取って
わたしは”自分だけの額縁”に嵌め
心の抽斗にしまう
そして ときに
そっと引きだして
──見るが
すでに絵は消えてしまい
額縁だけが残っている
それで わたしはまた額縁に入れる風景を
探さねばならない
そのようにいつも額縁の絵を探している
ああ
今日は
雪の豊後富士が美しい