詩110

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  想い
      2014.9.27
若者が
ひとり
土手に腰掛けて
何か想いにふっけている

その
後姿を吹く
秋風‥‥‥

通りかかった
わたしは
ふと歩みを止め
そして
見つける

わたしが置いてきた
ものを
もうわたしには
   無縁なものを‥‥‥


      リルケ風に


  枯葉
          2014.11.27
わたしは着ぶくれて
師走の舗道を歩いている
街角にはジングルベルの曲が流れ
道行くひとの足どりを軽くするが
わたしの心は重い
わたしに残されている時間は‥‥?

太陽の季節はすでに遠く去り
わたしの人生もはや冬を迎えている
ああ、わたしに残されている時間は‥‥?

突如 北風が白髪を吹く
すると 枯葉が
急にわたしの前を走り出し
わたしを先導する
運命を共にしようと‥‥!


  根井先生の葬儀の日遠くにいて 即興
                   2014.12.1
10時
わたしは遠くにいて
或る葬儀の時間を待っている
わたしの恩師の死
人生とはなんと虚しいものか
必ず訪れると知ってはいても
その瞬間までは
人はそれを受け入れることができない

亡くなったひとの
面影がよみがえる
面影はありありとよみがえり
故人の人生が一つの笑顔に
集約される

みずからを律する
厳しい生き方のうえにあった笑顔
俗世間の汚れのそとにあった
子どものような
無邪気なあの笑顔
それは 高邁な哲学者の
高潔のあかし
そして
たぶん確かな智慧に到達したひとの
悟得の笑顔
わたしは遠くにいて遺影を拝することが出来ないが
そのような遺影を今心の奥に想い描く

生死を超越したであろう
先生の死は
あるいは悲しみではないのかも知れないが
それでも
釈迦入滅のような悲しみ


   2014年11月30日
     宮大名誉教授根井康雄先生逝去 享年84
     ご冥福を祈りつつ 葬儀に並行して作る