詩108

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  クローバ その3
               2014.5.3
少年たちが遊んでいる傍らで
少女たちは楽しそうに
クローバの花を摘んでいる
摘み終えると
少女たちは
摘み溜めたクローバの花を
巧みに結って
首飾りを作り
それをおのおの首にかけた
クローバの花の首飾りは
高価な金や宝石の首飾りよりも
少女たちによく似合った
クローバの花の首飾りをつけた
少女たちは妖精のように見えた

その時からである
少年たちが少女たちを
特別な目で見るようになったのは


  クローバ その4
            2014.5.17
グランドの隅
クローバの生えているところ
少女が二人並んで座り
美味しそうにアイスクリームを
食べている
──クローバに座すスカートの全き円*
誰の作だったか?            
ふと わたしは記憶の底より
俳句を呼び覚ます
五月の晴れた空には
白い雲が浮いていて
遠くでは噴水が虹をかけている
少女らはのんきに
アイスクリームを舐めている
平和の味を味わっている

  橋詰沙尋
       日本大歳時記(講談社)




  タンポポ その2 ヴァージョン
              2014.5.5
子どもがタンポポを吹いて飛ばしている
タンポポは風にのって
つぎつぎと
空のかなたへ飛んでいく
タンポポは いずこへ?
森か、湿地か、草原か、
あるいは
河か、岩場か、アスファルトの上?
それは誰にもわからない
それでも
ただ タンポポは飛んでいく
つぎつぎに
五月の晴れた空を飛んでいく
運命の風にのって飛んでいく


 クローバ その5
          2014.6.7
クローバの花を
一つ摘んで
ぼくは胸に飾る

すると 一つの面影が
よみがえる
───隣りのミヨちゃん

それは ママゴトをするころの

クローバの花を一つ摘み

ミヨちゃんは
ぼくの胸のポケットに
さしてくれた

ミヨちゃんは そのあと
どこか遠くに行ってしまい
もう60年も会っていない

ああ この一度だけ!!
ぼくの人生で
天使がほほ笑んだのは