詩106
志高湖の白鳥
2013.11.8
初冬の湖に白鳥が浮いている
白鳥は
一年ひととせの月日をこの湖で過ごし
またやって来た冬を感じている
冬は白鳥の季節
白鳥はますます白く
水に映える姿は清楚で気高い
白鳥を
<水に置く一巨花>
に喩えた俳人がいたが
白鳥は
確かに 目を楽しませる
冬の湖の美しい花
花のように静かに浮いて
白鳥が啼くことは 稀だが
時折 空を仰ぎ
冴えわたる空気のなか
二三声
甲高い澄み切った声で
啼く
その声は聞く者の
ロマンをいたくかき立て
はるか 郷愁をさそうが
でも その声は
湖を出られないことを
知ったいるかのようーーー
註
白鳥といふ一巨花を水に置く
草田男
落木
2013.11.25
わが庭の
桜の木
日々葉を
散らし
梢に残る
葉の
いくばく
今日も
眺め暮らせば
花の
散るより
嘆かれる
スケッチ
2014.1.17
若いカップルが
冬の海をながめている
海はすこし荒れていて
風に乗って鴎が舞っている
渺々として
波ばかりの冬の海を
二人は手をつないで
黙然と
ながめている
何も語らないでも
今 二人の心はしっかりつながっている
時折
二人の頭上に
鴎がやってくる
天使のように
田ノ浦ビーチにて