詩105
面影
2013・9・9
かのひとの面影やどす
野辺の白百合
うつむき咲ける姿よろしき
ひととものみな古りゆけど
変らざるもの
実げにもあるかな
かのひとの若くして
みまかりしかば
花の絵を観て
2013.9・11
花の絵を観て思う
素晴らしい
花の絵を観たのだが
現代の有名画家の描く
その絵は見事というほかは
ないのだが
大いに目を楽しませてくれたのだが
だが
わたしは一抹の不満を
隠しきれない
その絵は充分に花を描いていると
思われるのだが
その花が枯れるようには
どうしても観えないのだ
森ーMと歩いた
2013.10.10
森を抜ける
一本の道
よくMと歩いた道
ひとりでも歩いた道
森を抜けると風景は開け
遠く 学校も教会も見渡せた
すでにMは亡くなり
一本の道は少しも変わらないが
森を抜けても
その向こうに風景はもう無い
Mは牧 典功 2010.9.18 逝去
予感
2013.10.19
白鷺が一羽
あわてて飛びたった
一陣の風が
川面を吹き抜け
枯れた葦の群れをゆらした
時が
冬の到来を告げたのだ
笑顔を失った太陽は
雲に隠れ
落ち葉が
カラカラとからびた声を
発して走り出し
大地は
おびただしい昆虫たちの
屍骸を埋葬する
全てが滅びへと向かっている
だが ある予感がーーー
わたしは
飛びたった一羽の白鷺の
行方を目で追ったが
低く垂れた
雲の隙間より
青い空がのぞいていた
落ち葉
2013.10.29
落ち葉が走っていく
街路樹のある街角を
急ぐ人の
前を
後ろを
脚に纏いつくのもある
慌ただしく
師走の巷を急ぐ人の後から
落ち葉は
つぎつぎと追っかけてくる
運命のように
しっこくーーー
カラカラと
乾涸びた
非情の声を
発しながら
どこまでも
追いかけてくる
逃れようと急ぐ脚
だが逃れられない脚