詩104

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   即興
               2013.8.15
落ち葉が一枚降ってきた
驚いて見まわすが
辺りにはそれらしき木立も
森もない
目を上げると
空には灼熱の太陽が
まだ燦燦と輝いている
入道雲はビルのうえで
威容を誇っている
猛暑で地上は
喘いでいる
まるで天上の園からのように
降ってきた落ち葉
季節の速達便のような
一枚

 
   ミロのビーナス幻想
                2013.9.1
ミロのビーナス像
初めて
それを目にしたとき
ぼくのなかで
それは
もう大理石の彫像でも
女神でもなくなった

あなたは
完璧な美をそなえた
一人の蠱惑的な西洋の女
プロポーションを誇る
ふくよかな地中海の処女
あなたに一目会いたいと
あなたを讃えたいと
はるばるやって来た
東洋の
一貧詩人は
ことばに詰まる
あなたに捧げることばを
探すが
見つけることができない
あなたの比類なき美



形而上の美はーーー
蓋し
東洋の女性の美ではない
あなたはこよなく美しいが
両腕がなくて可哀想



   リョウアンジ
  ジョン・ベリマンの詩を読んで
                2013.8.22
 なんという大きさだ!
 写真も
 図面もうそをつく

と 龍安寺を訪れた
ある西洋の詩人はうたった

似たような感想を
わたしももったことがある
         だが 少し違って

 なんという狭さだ!
 写真も
 ガイドもうそをつく

それは修学旅行で訪れて
初めて石庭を目にしたとき
飛行機できた詩人はさらにうたう

 七千マイルやってきたのだ
 すべては見ることのため
 なんとういう大きさだ!

わたしは迷う
わたしに見えたものは
わたしが本当に見たものは

  狭い砂の庭なのか
  広大な海なのか

  ジョン・ベルマンは米国のビート派の詩人