詩100

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    美しい瞳   即興詩
                  2013.3.8
わたしは今日
美しい瞳にあった
その瞳には曇りがなく
不思議に澄んでいた
その人の身体からだは普通ではなかった
運命の不平等をわたしは思った
わたしは同情では済まないものを感じた
のんきに詩など作ってはいられないとも思った
詩など何の助けにも救いにも慰めにもならないことを
恥ずかしく感じた
だが、不思議でならなっかた
その瞳に
運命への呪いはなかった
わたしはその澄んだ瞳に吸い寄せられた
わたしは彼に代わって天を呪ってみたが
それはわたしを貶めた
天に恨みは届かない
太陽は等しく人を照らすのみ
ああ 太陽よ
輝いて
その美しい瞳に光を注げ
曇りのない瞳は光を多く
とりこむ
  
    
   車椅子    
                2013.3.27
桜並木の土手の道を
車椅子が押されていく
乗っているのは
年老いた父親
それを押していくのは
その息子
桜はもうチラホラ散りはじめ
二人の行く手に
蝶のように舞っている
    車椅子を押す息子の思い
    花を見上げる老父の心
春も盛りを少し過ぎたころ
桜並木の土手の道を
車椅子はゆっくりと過ぎていく
散る花のなかを
         影絵のように

  ベンチ その1
              2013.4.12
チューリプが咲く
公園の
ベンチに止まって
蝶が羽を動かしている
蝶は羽を上下して
しきりに人を招いている
やがて
若い男女がやってきて
ベンチに座ると
蝶は飛びたって
しばしチューリップの上を
舞っているが
やがて止まると 蝶は
チューリップに熱いキスをする
すると
ベンチでは若い男女も
キスをする


  ベンチ その2
             2013.4.21
公園の
ベンチに
老人がひとり座っている
公園には
チューリップが咲いている
その上を
蝶が舞っている
老人は
それを眺めて
いつまでも休憩している
年をとると
人は子どもにかえる
老人には
チューリップの上を
舞っている
蝶が
妖精に見えている

老人はいつしか
居眠りをはじめ
ベンチに立てかけた
ステッキには
蝶が止まっている