詩73
   大阿蘇
               10.9.11
阿蘇よ
ぼくはもうお前を
すっかり忘れかけていた

歳月は矢のように飛び去り
駒あそぶ草千里浜の記憶も
たまきなす外輪山の印象も
疾っくに色褪せてしまっていた

ああ!大阿蘇
青春の日に
幾たびも幾たびも
訪れた山
思われ人と望みを抱きーーー

悩み多き青春も遠く去り
思われ人も去ってしまった、今
また ぼくは
はるばる訪ねて来て
お前に手を振る

すると お前は白い噴煙を靡かせて
応えてくれた

ああ!阿蘇よ
お前は忘れないでいて
くれたのだ!!
次のページへ
  funeral 
                10.9.18
僕はMの葬儀に参加しなかった
死は突然で
二人は遠く離れすぎていた

僕はMの葬儀に参加できなかった
知らせはあまりに急で
旅の準備は整わなかった

竹馬の友
無二の親友
───そのMの

葬儀に僕は間に合わなかった
僕はMの棺を見送れなかった
一本の線香を焚いてやることさえ
叶わなかった

僕はMとの
大事な大事な別れを果せなかった
天が僕とMとの別れを阻んだーーー

そう
天は阻んだのだ
天が別れをさせなかったのだ

僕とMとの間には別れなど
存在しないのだ

彼は僕の中で
生きるのだ

永遠にーーー


  牧(佐藤)典功逝去 享年64 
 
   中秋の名月
                
君無くて何ぞ月見の楽しかろ
     ただ酔ふためぞ今宵の宴は
    
  故人は和歌が得意だったのを偲びて
                  10.9.21  
  高尾池にて
             10.9.23
秋の池に
釣人が糸を垂れている

池には白い雲が映り
漣もたたず
浮子も動こうとしない
釣人はじっと耐えているーーー

落ち葉が一枚落ちてきて
水面を乱した

水面─みのも