詩68
窓
10.6.17
窓の外を
白い雲が走ってゆく
暗い書斎の窓の外を
雲は逃げるように走ってゆく
私は窓を開けた
すると一羽の鳥が飛んでいて
鳥は雲を追いかけている
晴れた五月の大空を
鳥と雲は追いかけっこしている
雲は何処までも
逃げてゆき
鳥は何処までも
追いかけてゆく
だが
雲は何処までも
何処までも
逃げるつもりーーー
鳥は何処まで追えるのだろう
───鳥の力は尽きるはず
ああ虚しきレース
私は窓を閉めた
すると
窓は私に問うてきた
───お前にはもう追いかけるものはないのか
と
紫陽花の道
10.6.24
紫陽花の咲く道を
歩いていると
私のすぐ前を
二人の若い男女が
手を繋いで歩いていく
いかにも楽しそうに
幸せそうに
───まるで見せつけるように
私は意地悪く考える
この紫陽花の道も直ぐに終わる
さすれば二人も手を離すだろうーーー
やがて思ったように
紫陽花の道も尽きたが
確かに私の紫陽花の道は尽きたがーーー
二人はなおも手を繋いでいく
二人の紫陽花の道は
続いているらしい
どこまでも
どこまでも
詩
10.7.9
眼の前を蝶々が
一羽よぎっても
ヒトは啓示を感じる
しかし、
それは喋ってはならない
それは詩のコトバによってのみ
語られることである