詩69
   朝  
               10.6.28

目覚めると
もう雀がきている
いつものように
屋根の上に

昨日と
全く同じ朝

──同じ目覚め
──同じ囀り
──同じ雀?

だが
雀にとって
世界は常に新しいのだ
雀の世界に過去はない
昨日もない

日々是新たなる出発

朝がいつも新鮮なのは
雀が囀るため!

  ある問いに答えて
               10.7.18
宇宙は
無なのだ
 
「無我」などと唱えた
禅家の坊さんがいたが
 
いつまでも「我」がついて
まわっている

「我」はいらない
宇宙は「無」それだけ!!

人もまた「無」のなかに生きている

人は 眠る
そして起きる

いわば宇宙からエネルギーを貰って
活動がはじまる

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   郭公
                  10.7.8
吊橋の上から見下ろせば
五月の谷深く
聞こえくる二つの声

かわるがわるに呼び交わす
寂しく澄んだ声
二重唱の郭公の声

郭公鳥は二羽いるのだろうか?
或いはーーー
一つの声の谺?

奥深く処定めず聴こえくるその声を
かつて、イギリスの詩人は
「神の声」と称えた

ああ、今、私もその声を聴いている
五月の新緑の谷間にかかった
高い吊橋の上で───

天と地の境に宙吊りになって
この世とあの世と呼び交わす
神秘の声をーーー
   
      九重、日本一の吊橋にて
もし眠らなかったらどうなのか───
考えてみたまえ 
 
     宇宙の基底は「無」    
     眠りはいわば「無」の擬似体験
     「無」は体験も認識もできない
     次元ゼロ?