詩62
  ああ 秋だ
             09.9.16
ああ 秋だ
私は帽子をとる
私は読みかけの本を閉じ
書斎から飛び出していく

ああ 秋だ
私は広く世界を見渡す
──天高く馬肥える秋
──スポーツの秋
──芸術の秋
──稔りの秋
──食欲の秋
だが 私の秋は見つからない
 
  (というのも
   私の髪は秋霜を得て
   私自身がもうすっかり<秋>なのだから)

私は帽子を持って
また帰ってくる
私の書斎の読みかけの本のもとに

ああ 秋だ
──読書の秋だ


  註釈 <秋>は人生の秋
      読書こそ人生の秋の過ごし方
     秋の小曲
                09.9.23
疲れた夏を葬りて秋はきたり
天地あめつちに悲しみは満ち
木の葉は愁いて落つ
 
いづくに行くや羽の破れし胡蝶
汝、飛ぶ外はなく飛びゆくや
疲れたる翼を何ぞ休めざる

熟したる木の実は自ら落ち
落下はあまねく世にゆき渡り
人の身もまたーーー

月は冷たく滅びを照らしだし
突如影たちが踊りだす
ああ 永久を願うことの愚かさ

淋しい風が頬を撫ぜ
虫の音は静かなる眠りへと誘う
この死の願い何故ぞ

  
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