詩61
隣りの敷地で
09.9.5
隣りの敷地で
今日も工夫たちが働いている
容赦なく照りつける真夏の太陽のもと
若い工夫もいてーーー
汗水を流しながら
熱心に何かを作っている
彼らは何を作っているのか?
隣りと我家の境には
高い植え込みがあり
彼らが作っているのもは見えないがーーー
とまれ
彼らは熱心に、実に熱心に
大方は無言で
槌音だけを高く響かせながら
黙々と作りつづけている
彼らが作っているものは見えないが
ときたま聞こえる 話し声と
ここちよい槌のリズムとで
この燃えるような太陽のもと
何かが確かに作られているのを感じる
何かが次第に作られていくのを感じる
ああ そして、また感じる
ものが作られていく喜びを
ものを作ることの楽しさを
手でものを作る尊さを
しかり、自らの手で───
今や文明が失おうとしている
労働の喜び、尊さを
わたしは感じる
真夏の焼け付くような太陽のもとで
汗水を垂らしながら働きつづける
彼らに
ある丘にて
09.9.10
握り飯一つを持って
ぼくはやってきた
丘の上の
いつもの樫の木の下に
握り飯をほうばりながら
ぼくは聴く
──木立をわたる風の音を
──小鳥たちの囀りを
──近くの小川のせせらぎを
──遥か彼方の波の音を
そして
──遠くかすかな街の音を
そう、遠くかすかに
ときどき風が運んでくる
その音を
ぼくの耳はするどく聴きとる
ぼくの耳は知っている
その音から逃れられないことを
真理
09.4.20
ぼくは本を読む
「真理」を求めて
ひち難しい
「哲学」の本から読み始め
ついには
子ども騙しの
「お伽」の本までも読む
そして迷う
はたして
「真理」はどの本に
書かれているのやら?