詩60
   森の外れに  復活 その1
                  09.1.30
森の外れに
一本の裸の木が立っている
枝も幹もすぱっと切られ
まるで一本の棒杭のようになって
だが
まだ 根を張ったまま立っている
───死んでいるのか生きているのか?

木はそれでもしっかりと立っている
枝も葉もない棒杭の形で根を張ってーーー
その所に立っている
春が過ぎ 
    夏となり
       秋になり
          冬が来て
森がすっかり雪に埋もれても
まだ頭を出して立っている

やがて
長い長い冬も終わり
また 春がやって来て
雪が解ける と
木はもとの姿を現わして
やはり 棒杭のように立っている
鳥も気づかず人目もひかず
森の外れに
ひっそり立っている

でも
ある日
よく見ると
木は瘤の所に
嘗て枝があった──その所に
若い葉を付けていた

    詩作を中断する
    地球儀  その2

  スペースシャトル打ち上げの
  TV実況中継を見て 
         09.3.16
                        09.8.31
2009年3月16日8時43分
米国フロリダ州ケネディー宇宙センターより
スペースシャトル「ディスカバリー」は打ち上げられた
観衆の歓声と拍手のなか
シャトルは轟音とともに
瞬く間に碧空に消えていった
ぼくは遥か遠く隔たったところ
地球の反対側に居て
誰よりもはっきりとそれを見た

スペースシャトルには
6名の米国人クルーに混じり
日本人宇宙飛行士の
若田光一さんが乗り組んでいるのだ
若田さんのミッションは
宇宙ステーションに「きぼう」を取り付けること
そして
漆黒の暗闇に輝く無数の星々のなかに
吾が日本の「きぼう」を
───吾々の希望を
燦然と輝かすのだ

もうそろそろ シャトルは
地球周回軌道に乗るころ
若田さんは無重力の船内を
ふわふわと漂いながら
きっと 巨大な地球儀のような地球を
うっとり眺めているはず

ああ
いつのことであろうか
誰もが
この地球儀を見ることができるのは
この国境線のない美しい地球儀を───

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