詩58
  十二月一日ついたち
               08.12.1
窓の外では
落ち葉が
しきりに身を震わせながら
散っている

ときどき
風が
枝を強く揺すって
季節のめぐりを急がせ
すでに
裸になった木々たちが
厚い雲の衣装と向き合っている

遠い山並みに


 
窓を開けると
一陣の冷たい風が
さっと吹き込み
壁のカレンダーをめくった


   ゴッホの糸杉
                 08.?.?
ぼくはゴッホの絵の中にある
糸杉をみるのがとても好きだ
糸杉はどれも素早いタッチで
描かれてをり
それを描くゴッホの筆には
ためらいがない

糸杉のあるものは
静かにすっくと立ってをり
あるものは
はげしく燃え立つ炎のように立ってをり
あるものは
天にするどく突き出すように立っている
そして
どの木も大地に
しっかりと根を張って立っている
まるでゴッホ自身のように
    
      ───反古紙のなぐり書きより

    出勤前に
                 08.12.6
東雲の空がしだいに白み  
山の端に朱盆の朝日が
顔を覗かせる
その一瞬───
世界が金色に染まる
このひとときの眺めを楽しみながら
私は 嘗て憶えた
ゲーテ最後の抒情詩
平凡な夜明けを愛で称えた
「ドルンブルグにて」を思い出し
口ずさむ
そして その一句
「わたしは浄らかな自然の偉大さに
感謝をおくる」
を 心の中で反芻する
 

だが
やがて 遠くでいつものように街の音が
俄かに今日の始まりを告げる と
私はとっさに我にかえり
慌てて 頭の中で
今日一日の計画を思いめぐらし
忙しく鞄を詰めはじめる
その中には
書類とともに
数冊の専門書も加えるが
でも
「ゲーテ詩集」を加えたりはしない

何故って
「青春」を鞄に詰めて持ち歩くのは
ただ重たいだけだから──今では


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