詩53
    空  小倉幻想
                 08.8.1
モノレールから降りて
空を見上げた
少女は
都会の空が切れ切れなのに気づいた

大都会の一隅の
小さなアパートの一室に
落ち着いた少女は

その日 見てきた
切れ切れの空を寄せ集めて
繕いはじめた
 
────心の糸と針とを使って

少女は心をこめて
丁寧に空を
縫い合わせていった

────心の糸と針とを使って

だが
空は
もうもとには戻らなかった

その夜 少女は
広い広いふるさとの青空の
夢をみた






 影に
                 08.8.22
真夏の日盛りの舗道を進む
僕に付き添う
短い影

木陰のベンチで
憩いを取ったとき
お前は暫し僕を離れ
僕を一人ぼっちに置き去りにしたが

歩を進めると
また 現れて
お前は 忠実な下僕のように
僕につき従う

そして 日盛りの人通りも絶えた道を
お前と僕は
互いに励ましあいながら
一つの方向に進んでいく

ああ 影よ!
孤独な僕につねに付き添う
お前は

神が
人にそっと付けてくれた
「いたわり」の証あか


 
次のページへ