詩47
声 訂正 08.2.7
08.1.11
風光る並木の陰を
女子中学生が二人
並んで 楽しそうに
自転車を漕いでゆく
スカートに風を孕ませ
髪を靡かせて
明るい未来に向かってのようにーーー
屈託のない高らかな笑い声が
後から追いかけてゆく
やがて
二人は不意に角を曲がって
姿を消してしまったが
彼女たちがあまりに突然曲がったので
「声」は行方を見失い
しばらくそこに止とどまっている
うららかな春の午後
二羽の鳩
08.1.30
電線に
二羽の鳩がとまっている
二羽は少し離れてとまっている
二羽の鳩は夫婦なのであろうか?
やがて
一羽の鳩が飛立つと
すぐ後を追ってもう一羽も飛立った
二羽の鳩はやはり少し距離をおき
つかず離れず飛んでゆく
廓寥とした青空の下
鳩は寂しい二つの魂のように飛んでゆく
ぽっかり浮かんだ白い雲が
それを見送っている
いつまでも
いつまでも
街灯
08.2.11
さびれた波止場の
ベンチのうえ
古風な街灯が
静かに夜を待っている
まだ太陽が明るく照らす
昼間
街灯の出番は
きつく拒まれている
やがて 西の空を
真っ赤に染めて
夕陽が沈み
夜が忍びやかにやってくると
「待ってました」と
街灯は パッと明るく灯り
いつもベンチにやってくるふたりを
優しく照らす
郊外の丘にのぼると
08.3.1
郊外の丘にのぼると
風景がひらけ
遠くに傾いた山が見える場所がある。
手前に一本の松ノ木が枝を張ってをり
ちょうど、セザンヌの描く
サント・ヴィクトワール山の構図をなしている。
私は街の喧騒を逃れ
ときどきこの場所にきて
その風景に親しむが
眺めていると
目の前の山がサント・ヴィクトワール山に見えてくる。
すると 自分もセザンヌの気分になり
私は
心のカンバスに向かってせっせと絵を描きはじめる。
絵が仕上がると
私は幸福な気分で
その絵を心の抽斗にそっとしまい
暫し 大いなる満足にひたる。
その絵は
私だけにしか見えないが
セザンヌにも引けをとらない傑作
なのである。