11月 6日
             2004.11.6
セーターの上に
軽く上着をはおり
大方葉を落ち尽くした
並木の道を
県立図書館へと急ぐ

図書館での目的は
一冊の画集を観ること
しかし それよりもなによりも
館の喫茶店で
一杯の熱い珈琲をゆっくり飲むこと

去り行く秋の後ろ姿っを追いかけながら
落ち葉の絨毯を踏みしめ
先を急いでいると
颯と 一陣の突風が
追い抜いていった

街路樹が痩せた手を強く振り
赤く色づいた葉が 数枚
勢いよく大空に舞い上がり
ゆっくり舞を舞い終えると
秋の姿は 消えていた


   聖母子像
           2004.12.12
県立芸術会館の
前庭の緑の木陰に
ひっそりと立つ
ブロンズの像

幼子を肩にのせ
十字架の形に掲げる
ブールデル作の
「聖母子像」

幼子イエスを
真理をかざすように
誇らかに掲げるその像を
目に留める人は稀








     時鳥 
          2004.11.3  
明るい五月の昼下がり
ひとり書斎にひき籠り
物思いに沈んでいると
突如 時鳥の飛びゆく声がした
急いで 窓を開けて見たが
もう何処にも その姿は見えなかった

椅子に戻り瞑想していると
また 一声鋭い声がした
慌てて窓を開け
木立の梢 雲井の辺り
さらに丘の方角を見やったが
やはり 何処にも姿は見えず
窓を閉めた

「二度あることは三度ある」
の譬えの如く
また 声がしたが
今度は 椅子を立たなかった
明るい五月の昼下がり
三度聞こえた
その声は
遥か天上より届くようでもあり
また
奥津城より谺してくるもののようでもあった


詩115

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