詩43
   喫茶店にて
                 07.11.6
喫茶店の窓際の席に座し
秋雨に烟る
外の景色を眺めながら
ひとり熱い珈琲を飲む

季節はめぐりを急ぎ
色付く木々の葉が
しきりに 舞を舞って落ち
目を楽しませてくれる

私は銀のスプーンで
無心にかき混ぜながら
ゆっくり珈琲を飲んでいる
人生の午後の時間を過ごすために

もはや望みも遠く去り
今 私には欲しいものはない
私の心を暖めてくれる
この一杯の珈琲の外には


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              07.11.9
外輪山の一角
野菊の花の風に揺れる処
目の前に横たわる
大阿蘇は
今日も 白い噴煙を空高く上げている

私は
大都会の喧騒を逃れて
ときどき  ここにやって来る
あたかも
古い恋人に会うように

ああ
私が 心で呼びかけると
阿蘇は 今日も白い噴煙を靡かせて
応えてくれる
ーーー私だけの大阿蘇
   窓・鳩・風景
                  07.11.15
窓の外の小枝に留まって
一羽の鳩がもの憂げに遠くを眺めている

私は先さっきからその姿をじっと見つめている
すると
私の目の中で
鳩はだんだんと大きくなりだした

鳩が
大きくなるにしたがって
周りの風景は 萎縮し
だんだんと 退き始めた

鳩はいよいよ大きくなり
目の中で
巨大になり         (厖大になり)

ついに
風景は どこかに逃げ去ってしまった

鳩は やがて
その大きな翼を広げ何処ともなく飛び立ち
風景は また戻ってきた

風景は すぐに戻ってきたので
鳩が飛び去ったあとの
小枝が まだ揺れている
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