詩35
樹
2005.11.24
ぼくは樹を見るのが好きだ
樫の樹であっても
樟の樹であっても
杉の樹であっても
樹は
大地にしっかり根を張り
大空に枝をのばし
樹は
風景を従えてどっしりと立っている
そんな樹を見るのが好きだ
ぼくは君を見るのが好きだ
君が
ぼくのよく知っている人であろうと
名前も知らない人であろうと
男であろうと
女であろうと
ぼくが君に視線を向けるとき
君は常に
風景の中心にいる
そんな君をぼくは熱い眼差しで見つめる
ぼくが詩を書くのは
2005.11.25
ぼくが詩を書くのは
あなたに読んでもらうため
あなたが
ぼくの知らない人であろうとも
あるいは
ぼくのよく知っている人であろうとも
とまれ
ぼくが詩を書くのは
たった一人のあなたに読んでもらうため
世界でたった一人の
宇宙でたった一人の
あなたに読んでもらう
それだけのために詩を書いている
何故なら
ぼくも宇宙に
たった一人なのだから
若い奥さんを亡くした友に
2005.11.26
若い奥さんを亡くした
友に
慰めの手紙を書こうと
言葉を探すが
言葉が見つからない
言葉が続かない
慰めの言葉はいろいろあるが
君には
どんな言葉も力にならない
どんな言葉も慰めにならない
ああ
君に
どうして
慰めの言葉がいえようか
何故なら
ぼくも君と
同じくらい悲しいのだから
メンタルスケッチ2
2005.12.4
窓の外を見ていると
壁に沿って黄葉が一つひらひらと落ちた
私はふと
−−ー見ると白い螺旋がずっとついている
と言ったある詩人の言葉を思い出した
そこで
次の落ち葉を待ち
今度は注意深く観察してみたが
そんな螺旋は見えなかった
何度見ても
私にはそのようなものは見えなかった
ついに諦めて
書斎に篭もり
ぼんやりしていると
またその情景が心に浮かんできたが
そこにははっきり
白い螺旋がずっとついていた
<北川冬彦の詩を読んで>