詩31
八月二十七日博多より帰って
                2005.8.27
大都市での二泊三日の
生活は
ぼくを圧倒した
林立する高層ビルの群れ
その間を縫って走る
血管のような
交通網
ひっきりなしに運ばれる
人と物
都市は巨大なエネルギーに満ちた
生き物の姿をしていた
しかし
ビルの屋上から見下ろすとき
人は
小さく
豆粒ほどに見えた

それから三日後
今、
ぼくは
阿蘇の外輪山に来ている
目の前に見る
大阿蘇は今日も白い噴煙を上げ
悠久の時間の流れの中で
息づいている
阿蘇外輪山の一角
ぼくはたびたび
ここにやって来る
今日もまた
はるばるやって来て
ここに立っている
大阿蘇にエネルギーを
もらうために
   ある記憶
            2005.9.3
その人は突然村にやって来た
ぼろをまとい筵を手にし
少しの持ち物を背負い
何処からともなくやって来た

その人は物乞いに時々
村の家々にもやって来た
人々はあらぬ噂をたてたりしたが
真相は誰も知らなかった

子ども達は好奇の眼差しを向け
時にはからかいもしたが
やがては飽きて
気にも止めなくなっていった

そんな折り
仲間の一人がぼくに囁いた
あの人は本当は偉い人なのだと
徳のある人なのだと

時は流れてーーー
いつしかその人もいなくなり
大方の友も村を去り
ぼくも村を出ていった

しかし何故か
今でも気になる友の言葉
からかいだったのか本気だったのか
確かめられなかったその真意

薄れゆく記憶の彼方
真偽は遠く定かでないが
確かなことが一つだけ
見かけではない人の価値