海3
2004.8.14
人影も疎らになった
晩夏の浜辺を歩いていると
行く手に
突如歓声があがった
急いで近づいてみると
一匹の亀に
数人の少年が
石を投げつけていた
亀はときどき首を引っ込め
必死に逃れていたが
歩みは遅く
その形相は痛ましかった
ぼくは止めることをせず
その光景を暫く眺めていた
やがて亀は波打ち際にたどり着き
青い海原へと消えていった
少年達も諦めて
今度は波に向かって石を抛り始め
ぼくも浜を去った
帰りの電車に乗り
つり革につかまり
ゆられながら
去りゆく海を眺めていると
その情景がまた目に浮かび
朝、テレビのニュースでみた
戦火を逃れる
民衆の姿と重なった