詩3
空3(入道雲)
2004.7.25
蝉時雨が降り注ぐ
朝の教室
開け放した窓から
入道雲が覗き込むので
少年は落ち着いて鉛筆を
握れない
汽笛が響く
午後の教室
潮騒が聞こえる耳元で
入道雲は
しきりに少年に問いかける
「夏休みの計画はできたか」と
城下町
2004.8.3
夏の一日
とある城下の町に遊んだ
古い土塀に添って歩き
武家屋敷を巡り
庭やつくばいをながめ
刀や槍や鎧をいくつも
いくつも見て
茂みの辺り
白く聳える城に向かった
石畳の入り組んだ道を
大手門をめざして
ゆっくり進み
やっと到着し
お濠を覗くと
そこには
立派な侍の自分が映っていた
やまなみハイウエー 2004.8.3
メンタルスケッチ
真夏の高原を走る
白いセダン
ハンドルを握る手も軽く
ぐいとアクセルを踏み込む
カーラジオを高鳴らせ
窓を全開し風を入れ
髪に孕ませれば
気分はまさにオープンカー
バックミラーに遠ざかる村
近づく牧場
流れる馬柵
雲を追いかけて走れば
雲はどこまでも逃げていく
湖を過ぎ
森を過ぎ
やがて目に入る
大きな道路標識
「阿蘇まで50Km」
前方に立ち上る
白い噴煙
牡丹寺にて
2004.8.8
ある由緒ある寺に
仲間と連れだって
牡丹の花を観にいった
花は今が盛りで
中国の美人を想わせた
まるで美女に向かうかのように
誰もがカメラを向け
次々にシャッターを切ったが
自分は一人加わらなかった
別にカメラを忘れてきた訳では
なかったが
午後の日に輝く
牡丹の花は
目に納めるだけで
十分であった