詩27
丘の上の杉の木
                   2005.8.8.
私の生まれた故里の
小高い丘の上に
一本の杉の木が立っている
しっかりと根を張り毅然と天を支えて
立っている
ゴッホの糸杉のように

私は嘗てその杉の木を
ゴッホにならって描きたいと思った
それで画家になろうとまで思ったのだが
私はすぐに諦めた
私には絵を描く力がない
ゴッホのような魂がない

にもかかわらず
一本のその杉の木を
私は忘れることができない
遠く離れていても
木はいつも私の心の中に立っていて
私に語りかけてくる

私を描いてくれ
絵にしてくれと
私はとうにその試みを放棄したのだが
木はいつまでも語りかけてくる
描いてくれ
絵にしてくれと

きっと
木は言い続けるであろう
いつまでもいつまでも
あの丘の上に
その木が毅然と立っているかぎり
私の生命(いのち)の続くかぎり−−−
   所懐
          2005.8.13
ぼくの心が平和で
開かれているとき
花は笑い
鳥は歌う

ぼくの心が迷い
閉ざされているとき
花は青ざめ
鳥は歌わない

自然は少しも
ぼくに逆らわない
なぜって
自然とぼくは一体だから

ぼくは耐えられない
花の笑わない日
鳥の歌わない日
そんな世界があることに

ぼくは絶えず自然を見
耳傾ける
自然の沈黙
それは人生の喪失だから