詩26
  丘の上の樫の樹
                    2005.8.4
ぼくはまたやって来た
この丘に 
遠い一つの思い出をもとめて

雲雀が囀り
蝶々が案内する
丘の小道を
白い雲を仰ぎ
ぼくは
一人ゆっくり上っていった
あの場所へと
丘の上の枝を張る
一本の樫の樹の下へと

そして思い出す
あの時の
二人だけの時間を

だが
思い出を頒ちあうのは
丘の上の
一本のこの古い樫の樹だけ

   夏雲
                2005.8.9
少年は見た
窓の外に
夏初めての雲の湧くのを
雲は
むくむくと起き上がり
「アラジンと不思議なランプ」の
魔神のように思われた
少年は密かに呟いた
   魔神よ
   ぼくの願いを叶えてくれ
   誰にも言えないこの思いを


  無題
             2005.8.7
雲が流れていく
雲が流れていく
雲が流れていく先は
幼年期
それはお伽の国だった

雲が流れていく
雲が流れていく
雲が流れていく先は
少年期
それは見知らぬ国だった

雲が流れていく
雲が流れていく
雲が流れていく先は
壮年期
それは果てない海だった

雲が流れていく
雲が流れていく
雲が流れていく先は
老年期
それはすぐいく黄泉の国