詩23
梅雨
2005.6.19
梅雨は黴の季節
黴は何にでも生える
家具にも
書物にも
食べ物にも
どこにでも黴は生える
心にも生える
梅雨はまた紫陽花の季節
雨上がりの花に
早くもやって来る蝶
葉っぱに残る
百千の露の玉
どの一粒も
輝く太陽を宿している
動物資料館にて
2005.6.19.
展示室の一隅に飾ってある
ヘビのはく製
ガラスケースの中
ヘビはまるで生きているかのように舌を出し
こちらを睨む
その顔には
苦痛もなく
悲哀もなく
死の陰影もない
とぐろを巻き続けるヘビは
とうに生死を超えている
ヘビには生もなく
死もない
ただ ヘビは
永遠に
ヘビであり続けるだけである
虹
2005.6.26
雨上がり
ビルの屋上に来て
ひとり眺めれば
目に入る
鮮やかな虹
小都会の空にかかる
美しい
大きな虹
ああ!
この街を離れない理由
踏み切りにて
2005.7.3
郊外の踏み切り
遮断機の前に佇んで
過ぎていく
急行列車に
いつも手を振っていた
幼い日の記憶
車窓でも
−−−不思議なことに
きっと
誰かが手を振っていた
疲れた通勤の帰り道
降りた遮断機の前に立ち
見送る
快速列車
固く閉じた車窓には
手を振る者もなく
勿論 もう私も手を振らない
今や、非常なスピードで
列車は私の前を過ぎていく
「現代」を乗せて