詩18
  窓2
         2005.3.27
何もない
空っぽの窓
窓に浮く白い雲も
今日はない

何もない
空っぽの窓
飛ぶ鳥の影もなく
翳りもない

何もない
空っぽの窓
廓寥とした秋空
目にしみる青

何もない
空っぽの窓
何時までも見ている
空っぽの心


  菫の花
             2005.3.27
故里の
辻の地蔵の足もとに
ひっそりと咲く
菫の花

見送られ
故里を去るとき
微笑んでいたお地蔵さん
その日知った菫の花

時は流れて幾年月
故里の便りは途絶え
知る術もない
花のその後

春来れば
辻の地蔵の足もとに
咲く菫の花
今は私の胸にそっと咲く
  午後の喫茶店にて
                  2005.4.3
人生の午後を過ごす
昼下がりの喫茶店
ひとり珈琲を飲みながら
ゆったりと
辺りを見廻す
     テーブル
向かいの卓には
中年の紳士
人より速く進む腕時計を
しきりに気にしながら
忙しく珈琲をかき混ぜる

隣りには
若い恋人同士
チーズケーキを突きながら
ゆっくり流れる
甘い時間に浸っている

その向こうには
乳飲み子を抱えた
聖母のような母親
未来をしっかり抱きしめる腕に
時は正確に刻まれていく

人それぞれに
異なった時間が流れる
昼下がりの喫茶店
人生の午後を過ごす
私の時間はすでに止まっている

私はひとり静かに
空になった珈琲茶碗を
覗きながら
飲み干してしまった人生を
振返る

そして思う
珈琲茶碗の底に透ける
私の人生は
どこか
ほろ苦い珈琲の味に似ると