詩22
  ちょうちょ
           2005.5.28
人けない団地の
昼下がり
誰も通らない道を
ちょうちょが一匹
翅を輝かせながら
飛んでいる

ちょうちょは
ときどき
人けない家々の
フェンスのある庭に
立ち寄って
花たちと
会話を交わしながら
飛んでいく

  原爆の日に
              2005.6.5.
入道雲が
キノコ雲を想わせる
原爆の日
ふと 見上げると
一羽の鳩が
朝日を浴びて
飛んでいた
鳩は
力強く羽ばたきながら
頭上高く大きく一度旋廻し
なおも上昇し
飛び続け
やがて 私の視界からは消えていったが
しかし
鳩は
いつまでもいつまでも
私の心の風景の中を
飛び続けた
私は急いで詩をしたためたが
私は切に願う
この詩を読んだ人の
心の風景の中で
この鳩が
いつまでもいつまでも
飛び続けることを
この平和の鳩が−−−
   峠にて
           2005.6.12
峠の茶屋で
一人お茶を飲みながら
眺める風景の中を
一羽の蝶が舞っている
黄の翅を輝かし
風に乗ってーーー

蝶は嬉々しとて舞っていたが
やがて
別の一羽が現れて
二羽になった蝶は
連れだって
深い谷間へと飛び去っていった

私は一服を終え
茶店を後にして
峠を下り始めたが
ふと 一つの
ささやかな
記憶を蘇らせた

嘗て この峠で出遭った
一組の男女
男は大学生 女は店員
幸せだが却って不安そうな二人は
手を振りながら
峠を去っていった

私はその面影を追いかけるように
明るい日差しの中
一人 急がず
峠を下っていった
教え子の
その後を案じつつーーー
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