詩17
  今日卒業の息子に
              2005.3.6
今日
卒業した息子よ
丸い証書入れの筒に
未来への夢と不安を
丸め込み
最後の制服に身をつつみ
嬉々として帰ってきた
我が子よ
今日のお前に
父は 在りし日の自分を見る
そして思う
お前のこれからの人生を
荒波の中を漕ぎ行く
一艘の小舟を
そして多分
それを助けてやれない
父の非力を

また思う
これまでの父の非力を
思春期の荒む心の相談も
勉強の手助けも
悩みを聞くことも
夢を語り合うことも
そして
今日の贈り物も
なにもしてやれなかった不甲斐なさを

だが息子よ
父が 一人息子のお前に贈るのは
何人にも負けない声援
溢れる程の愛
その形のない贈り物に
お前が気付くのは
何時のことであろう
ブラックホール         
             2005.3.13
ある日
突然
心に開く穴
そこに覗く深い闇
人の心の闇
その闇ほど暗いものはない
夜の闇は
なお
星々をいっそう輝かすが
心の闇に
輝くものはない
いわばそれは
ブラックホール
全てを吸い込む
宇宙の穴
ああ!
ぼくの心のブラックホールに
ぼく自身が吸い込まれていく


   藤後左右先生
              2005.3.20
達磨ストーブのある
高原のロッジ
朝の新聞を広げながら
ゆっくり飲む珈琲
屈託のない笑い声が辺りに響き
ストーブの上に置かれた薬罐の口は
音を出して蒸気を吐く
部屋の隅に堆く積まれた薪に
失われた時が滞り
たちこめる湯気の中に
過去の人達のシルエットが
朧に浮かぶ
そのシルエットの中から
ひょっこり現れ出てくる
一人の小柄な人物
我が師 藤後左右先生
口ずさむ
一つの俳句
ーーー室内を暖炉煙突大まがり